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シャープ、裏目に出た「蓄積の戦略」と「まじめな企業文化」 銀行団は救世主となり得るか

文=長田貴仁/岡山商科大学経営学部教授(経営学部長)、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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 女性がタバコを吸うか吸わないかは個人の自由ではある。そして、支店などでは正社員だけでなく、非正規雇用の人が増え、働く人々が多様化しているという点を割り引いても、保守的な職場と見られてきた銀行の企業(職場)文化が変わってきたことを象徴するエピソードだ。

 かつて、みずほ銀行の前身の一つである富士銀行は、シャープのメインバンクとして苦境期に救いの手を差し伸べ、シャープは息を吹き返した。このようなバンカーの心意気を、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は忘れないでほしい。

 金融は「経済の血」といわれ、なくてはならないものだが、一方で経営はカネだけではなく、ヒト、モノ、情報で成り立っている。銀行主導による改革の名のもと、新しいモノを生み出すメーカーの首を絞め、モチベーションを下げるようなことだけはやってはならない。現在、みずほ銀行は橋本明博氏、三菱東京UFJ銀行は橋本仁宏氏をシャープの取締役に置いている。事実上の銀行管理である。その割には、「銀行力」が発揮されていないのではないだろうか。

 銀行から見れば、経営改革が進まないシャープにしびれを切らしているのかもしれない。それにしては、すでに14年末には15年3月期に2期ぶりに赤字に転落することが明らかになっていたのに(最終損益が2223億円の赤字、前の期は115億円の黒字)、それまでに経営悪化を防ぐことができなかったのである。

 しかし、まずは切ることにより利益を出そうとする発想は銀行らしい。それを映し出したのが、5月14日に発表された中期経営計画である。その柱は、3500人の希望退職募集と社内カンパニー制の導入だった。高橋社長は、「社内カンパニー制により責任を明確にする」と表現しているが、赤字を出せば切り売りすることもあり得る銀行の意向を取り入れたものと考えられる。

 ある構造改革を断行した百貨店の元役員は「利益を出すなんて簡単なんです。切ればいいんですから。その後、成長を持続させることが難しいのです。それを実現できてこそ、構造改革と言えるのです」と話していた。

 みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は、シャープが持続的に成長できるようになったときにはじめて、大きなケーキを用意して祝杯をあげていただきたい。シャープで働く優秀な人々の魂まで切らないことを切望する。
(文=長田貴仁/岡山商科大学経営学部教授<経営学部長>、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー)

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