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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

全身を“汚す”イベントに若者殺到の謎 物欲を失い、特別な「時間の共有」を追求する若者達

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio
全身を“汚す”イベントに若者殺到の謎 物欲を失い、特別な「時間の共有」を追求する若者達の画像1「Thinkstock」より

 さまざまな色の粉末を浴びて、服も髪もカラフルになりながらゴールを目指す有料イベント「Color Me Rad(カラー・ミー・ラッド)」が話題を集めている。

 参加者の写真を見ると、確かににぎやかで楽しそうだが、「汚れてまで、イベントに参加したいのか?」という疑問を抱く人も少なくないだろう。しかし、現実に全米では大ブームを巻き起こし、日本でも全国各地で開催されている。毎回1万人以上の参加者を集めており、国内外で大人気だ。

 また、昨今はコスプレ関連のイベントが一般にも普及し、年々盛り上がりを見せている。ハロウィンの市場規模は、昨年で推定1100億円に達し、バレンタインデーを抜いたともいわれている。

 このように、「モノ」ではなく「イベントに参加するコト」にお金を使う人々が増えているのはなぜなのだろうか。消費活動の変容について、立教大学教授・有馬賢治氏はこう語る。

「これらの集客イベントを、マーケティングでは『体験型マーケティング』といいます。ファッションや家電などの実際の『モノ』よりも、仲間やその場で知り合った人と特別な時間や空間を共有する『コト』を魅力として提供している点が特徴です。バブルを体験して大人になった世代は、物欲を満たすことで満足感を得ていましたが、今の10~20代の若者が物心ついた時には、家電や最低限の娯楽に関するものはすでに家の中にありました。したがって、その世代は『欲しいものはあえて探さないといけない』ため、相対的に物欲が薄くなっているのです。

 また、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で多数の人々とつながっている若者は、自分にとって新しいものでも、どこかの誰かが既に持っていることを悟っているのです。こうした条件が整ったことにより、消費者心理として『物欲に対する見切り』が生まれました」

「モノ」が消費活動の選択肢から消えたことで、なぜ「コト」が求められるようになったのだろうか?

「インターネットが広く普及して、消費者はさまざまな情報にアクセスできるようになりました。その気になれば、グーグル・アースなどで世界一周の疑似体験さえも気軽にできるようになったのです。しかし、それは今すぐに積極的に動く必要がなくなったことも意味しています。録画したテレビ番組がたまってしまうと、観るのが面倒になってしまうのと似ています。やはり、テレビ番組は本放送の時間に楽しむ方が新鮮さを味わえるものです。

 体験型マーケティングの盛り上がりにも、同じことがいえます。『その時、その場所にいた人同士でしか体験できないイベントに参加するコトに価値がある』と考える人が増えているのも、時代背景的に納得できます」(有馬氏)

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