(画像は「足成」より)
これに怒った大西社長は「自主企画商品で対抗する」と言い出した。通常のメーカー品に比べて1~2割ほど価格を抑えた、自主企画による冬物衣料の品揃えを前年の3倍に増やし、12月19日から順次、店頭に並べる。同社は冬物セールを例年より2週間以上、後倒しして、来年1月18日から始める。さらに、その後の張り手が強烈だった。ユニクロと同じ(おっと、少し違う)高級製造小売り(SPA)に進出するというのだ。
自主企画商品の売上高総利益(粗利益)は30%代後半。メーカーのブランド品より10ポイント高いのが魅力だ。三越伊勢丹は冬物バーゲンを後倒しする2013年1月の売上高について「前半は1割近く減少するが、全体では、前年並み」と強気の見通しを明らかにしている。
ほかの大手百貨店は例年通り1月2日から冬物セールを始める。高島屋は、夏は一部の売り場を除いて例年より2週間後倒ししたが、冬は従来通りとする。初売りと冬物セールの同時期の開催は消費者に広く浸透しており、冬物セールを遅らせると集客に影響が出ると判断した。
大丸松坂屋百貨店も1月2日からセールを始める。三越伊勢丹HDと歩調を合わせて夏のセールを2週間後倒しした東急百貨店も、冬物セールは例年通りの態勢に戻す。この結果、大手百貨店では三越伊勢丹HDだけが冬物セールを1月18日にスタートさせることになった。大西社長は伊勢丹新宿本店など基幹店3店で、正月の福袋を例年より1割増やすことによって一定の売り上げを確保する防衛策をとる。
こうした大手百貨店とアパレル各社の主導権争いは、今に始まったことではない。
バブルが崩壊する前までは、夏と冬のセールは現在よりも2週間遅く始まっていた。バブル崩壊後、流通の業界地図は劇的に変化した。ショッピングセンターや駅ビルなど新しい商業施設が誕生し、ユニクロなど製造小売りといった強力なライバルが登場した。
ショッピングセンターは夏のセールを7月初頭に始める。ユニクロなどは1年を通してセールを行う。これに対抗して百貨店はセールを前倒しして、夏は7月、冬は12月初頭からセールをするようになった。