ソフトバンク「108万円」Pepper、ロボット一家に一台狙う?同社の周到な戦略
これによって、ユーザーからの端末代金の回収が確実に行えることとなり、端末への債権の証券化が可能となる点に目を付けた。結果、既存キャリアに比べて財務面で不利であったソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)は、新たな資金調達の道を開き、一気にシェアを伸ばした。
話題をPepperに戻すと、本体以外にサービスを受ける権利までも割賦の対象とすることで、恐らく真の本体価格(筆者は70万円程度と考えている)を十分にカバーする資金調達によって事業リスクを周到に回避しつつ、アーリーアダプター(新商品への関心が高く商品投入初期に購入する消費者)層にとって手の届く支払い体系で、最初の需要を取り込もうという戦略が見て取れる。
ビジネスモデルが牽引する家庭用ロボットの普及
AIBOは発売当初25万円だったが、わずか3年後には7万円を切るモデルが発売されている。Pepperも遠からず、購入者の支払う総費用(真の本体価格)が20万円を切ってくるだろう。現在スマホの端末価格が10万円程度であることを考えると、20万円のPepperが一家に一台ある状態は、十分に現実味のあるシナリオといえる。
ロボットの家庭への普及は、世界的にもまだ前例がない。ソフトバンクの孫正義社長得意のタイムマシン経営は、地域差と時間差から学べる先例のない未来を見据えたものへと、足を踏み入れてきた。今後、家庭用ロボットは、コミュニケーションプラットフォームとして広く家庭に普及することで、ネットワーク価値が経済価値に直結するビジネスモデルによって牽引されていくと考えるのが自然である。つまり、米アップルや米グーグルのスマホにおける戦略が、ロボットの家庭への普及のモデルとなる。
その先手を打ったかたちでのPepperの市場投入は、これまでもシェア獲得への大胆な施策を実行してきたソフトバンクならではの手法といえる。このモデルが成功すれば、やがてロボットがスマホのように普及し、「コミュニケーションの媒介者」として私たちの日常に入り込んで来る日が訪れるに違いない。
(文=三村昌裕/三村戦略パートナーズ代表取締役、戦略コンサルタント)