2013年3月に国家戦略特別区域法が成立し、その第1弾として14年3月に東京圏(国際ビジネス拠点)、関西圏(先端医療技術の研究・応用)、福岡県福岡市(起業家の拡大)、兵庫県養父市(山間農業の改革)、新潟県新潟市(大規模農業の実現)、沖縄県(観光産業の促進)の6地区が指定された。
東京圏は、都内9つの特別区のほか神奈川県、千葉県成田市が指定を受けた。20年の東京五輪を視野に入れ、世界からお金や人材、企業を集める国際的なビジネスの拠点作りをテーマに掲げている。容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)や用途制限を緩和して、大規模な都市の再開発を進める計画だ。
東京都では大手町(三菱地所)、八重洲(三井不動産と東京建物)、品川駅周辺(JR東日本)、虎ノ門(森ビルなど)、有明(住友不動産)が特区の指定を受け、国際競争力を高めるプロジェクトが目白押しだ。
東京駅の八重洲口に超高層ビル2棟が建設
三井不動産と東京建物は、それぞれJR東京駅の八重洲口にある2つの街区に、全国屈指の250メートル級の超高層ビルを建てる。
三井は、高さ245メートルの超高層ビル(地上45階、地下4階建て)を建設する。ビルの高層階には高級ホテルを誘致し、オフィスのほか再開発地区内にある小学校も入居する。16年1月に着工、22年中の完成を見込む。
東京建物が建設するのは、250メートルの超高層ビル(地上54階、地下4階建て)だ。オフィスや店舗のほか、大規模な国際会議場や外国人を対象とした医療機関を設ける。20年秋に着工し、24年春に完成の予定だ。
2つのビルの地下には、総面積2万平方メートルに及ぶ巨大なバスターミナルが作られる。東京駅と羽田・成田の両空港や地方都市を結ぶ高速バスが、ここから発着する。両街区の総事業費は、6000億円超が見込まれている。
八重洲地区は、東京駅を挟んだ反対側の丸の内地区に比べて再開発が遅れており、バス乗り場が分散したままだ。今る。
三井不動産に大差をつけられた三菱地所
大型の都市開発は、不動産デベロッパーのお家芸だ。三井は04年のコレド日本橋の開業で弾みをつけ、東京・日本橋地区の一体開発を推進中だ。江戸時代から続く老舗が軒を並べる日本橋の再生を主導した。
三菱地所は、丸の内ビルディングや新丸の内ビルディングを軸に、丸の内界隈に海外ブランドを集結させ、洗練された街並みを築き上げた。
だが、最近は三井と三菱のライバル2社の業績に差がついている。
三菱の16年3月期の連結決算の売上高は、前期比10.4%減の9950億円(15年3月期は1兆1102億円)、営業利益が13.6%減の1350億円(同1563億円)と大幅な減収減益の見通しだ。前期に計上した物流施設などの物件の売却が減り、再開発に伴うオフィスビルの閉鎖で賃料収入も落ち込むことが要因となった。
対する三井の16年3月期の連結決算の売上高は、前期比5.3%増の1兆6100億円(同1兆5290億円)、営業利益は4.8%増の1950億円(同1860億円)と増収増益の見込みだ。埼玉県富士見市のショッピングセンター・ららぽーと富士見など、複数の新たな商業施設が稼働する上、主力の賃貸事業では既存ビルの賃料引き上げが寄与する。
三菱の強みは、保有する賃貸等不動産の含み益が大きいことだ。14年3月期の有価証券報告書によると、三菱の含み益は2兆965億円となっており、三井の1兆2159億円を大きく上回った。三菱の含み益の大半は、丸の内エリアのビルだ。
これが、丸の内の“大家さん”である三菱の底力だが、同時に弱みにもなる。丸の内の再開発に依存しているため、成長率がどうしても低くなるのだ。
昨年、一時的ではあったが、株式の時価総額で三井が三菱を上回り、話題となった。今年、売り上げと利益で差をつけた三井が、時価総額でも三菱を完全に上回るかどうかが見どころとなる。
(文=編集部)