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東芝、汚れた歴史と実績 暴走を生んだ年功序列・終身雇用・社内競争と“配慮”

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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 問題が発覚しつつあった2月の段階で、東芝は過去の経営体制にまで遡って早急な調査をすべきだった。それをできなかったことが問題を深刻化させ、結果的に市場の不安心理を高めている。

ガバナンスと説明責任

 ガバナンスがなぜ必要なのか。理由のひとつは「説明責任の徹底」、つまり経営者が説明責任を果たすためである。ガバナンスそのものは、経営を支える一つの方策にすぎない。

 東芝にとどまらず、オリンパスの粉飾決算やタカタのリコール問題を見ると、ガバナンスの機能不全はわが国の大きな課題だ。それは、経営の「説明責任=アカウンタビリティ」をどう担保できるのかという問題につながる。

 奇しくも、日本は政府主導で企業統治=コーポレートガバナンスの強化を掲げてきた。官民の年金基金が株式の保有を増やし、機関投資家は「モノ言う株主」として行動している。多くの運用会社も、社会的責任に注目した運用に注力しつつある。

 こうした動きを受けて、もし東芝のガバナンスが機能するようになっていれば、不適切会計問題は発覚当初の段階で速やかに全容が解明され、しかるべき措置が取られていたかもしれない。だが実際には、時間の経過とともに問題がゆっくりと明らかになりつつある。ガバナンス強化という標題は、東芝にとって絵に描いた餅にすぎなかったのである。

 2001年末に破たんした米エネルギー企業、エンロンの不正会計を受け、当時日本でもガバナンス議論が高まった。議論の内容を見ていると、当時と現在で大きな差はない。そこから導き出される示唆は、日本はガバナンスという言葉に対する意識を、もう一度考え直す必要があるという点だ。

 ガバナンスと聞くと、「社外取締役の数を増やせばよい」というように表面的な議論に向かいやすい。それは確かに重要だが、それ以上に重要なことは、いかに経営陣が経営の責任、リスクを自らの言葉で、多様なバックグラウンドを持つ株主や利害関係者に説明できるかということに尽きる。投資家もこの点をより徹底して、ガバナンスの強化に関与すべきだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授)

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