店の待ち時間や企業の広告に隠された、無意識のうちに顧客満足度を上げる施策
顧客が製品・サービスを購買・消費したあとの行動は、インターネットの発達とともに、以前にも増して影響力を高めています。
満足した顧客は、リピート購買の可能性が高まるだけでなく、「最高の広告は満足した顧客である」といわれるように、SNSや友人へのポジティブな口コミによって、ほかの消費者からビジネスを得る機会につながります。逆に不満を持った顧客は商品を返品したり、ネガティブな口コミを流したり、公的手段による苦情や訴訟を起こしたりします。
そのため近年、多くの企業は業績指標の一つに顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)を取り入れています。たとえば日本生産性本部は、2009年度から毎年、大規模なアンケートにより、業種横断的に比較・分析が可能な「日本版顧客満足度調査」を行っています。
1泊5万円の高級ホテルと1泊7000円のビジネスホテルを比べたら、宿泊後の評価は当然、前者のほうが高いでしょう。そこで一般的に、顧客満足度は購買後の知覚パフォーマンス(価値)と購買前の期待との差で定義されます。
通常、消費者は高価格の製品・サービスに対しては高い期待を抱くため、価格以上のパフォーマンスをもたらさないと満足度は上がりません。逆に低価格でも、予想外にパフォーマンスがよかった場合には、高い満足をもたらします。
人は利得増加より損失回避の影響を強く受けるため、売り手は期待値を控えめに設定して、顧客が損失感を持たないようにするべきでしょう。
たとえばサービス産業では、顧客が不満を抱かないように、待ち時間は実際より長めに伝えます。滑走路で待機している航空機、レストランやテーマパークでの待ち時間を思い起こしてみましょう。30分待ちと言われて、しかたなくウンザリしながら待っていたところ、20分で入れたらラッキーと思いませんか? 逆に20分待ちと言われたのに、その時間が来ても入れなければ、そわそわし出すでしょうし、30分たっても入れなければ「20分と言われたのに」と、怒りの感情さえ芽生えてくる人もいるでしょう。
買ってもらうために、誇大広告などで商品に必要以上の期待を抱かせてしまうと、大きな不満につながってしまい、リピート購買や口コミにダメージが出ます。かといって、ある程度の期待を抱かせないと、購買してもらえないというジレンマもあります。そのため、どこまで期待を上げるべきかのバランスは微妙です。