サムスン、泥沼化するアップルとの訴訟合戦で売上好調!?
iOS対Androidというスマートフォンのシェア争いから、特許訴訟にまつわる法廷バトルに発展。全世界で局地戦を繰り広げている。
ここ数年、アップルがぶっちぎりの独走をしていたが、2012年の第1四半期では、スマホの出荷数でサムスンに追い抜かれた。サムスン製スマホの合計出荷台数が4220万台、iPhoneが3510万台だ。その影響か、iPhone 5S登場の噂が早くも流れている。iPhoneは1年に1回発売されていたが、サイクルを早める可能性もある。
それと同時に、世界各地で訴訟合戦が繰り広げられている。以前は、iPhoneやiPadの主要パーツをサムスンが製造するという協力関係にあったのだが、一気に敵対関係に。特許や意匠に関する争いが勃発した。
2012年8月24日、スマホの特許侵害をめぐり、米連邦地裁で争われていた訴訟の評決が出た。結果はアップルの勝訴で、10億5000万ドルという損害が認定された。このおかげで、サムスンの株価が下落。時価総額は123億ドルも落ち込んだ。しかし、違う国ではサムスンが勝訴。イギリスでタブレット端末のデザインに関する訴訟では、「サムスンのGALAXY TabはアップルのiPadを真似していない」という判決が出た。しかし、判事の一人が「GALAXYはiPadほどクールではない」と発言し、注目を集める。サムスンは勝ったのか、負けたのか、観客は大いに沸いた。さらに、アップルはGALAXY TabはiPadを真似していない、と発表を出すように命じられたのだが、中途半端な内容を掲載。やり直しを命じられている。
サムスン側からアップルを訴えて初めて勝ったのが、12年6月のオランダでの裁判。通信技術関連の特許をアップルが侵害していると認められた。日本でもサムスンの特許侵害は認められず、アップルの訴えを退けた。
この訴訟合戦は、まだまだ続くと思われるが、サムスンに思わぬメリットが出てきた。巨人アップルに戦いを挑み、五分五分の勝負をしているということで、サムスンのネームバリューが一気に高まったのだ。そのため、サムスン製品の売れ行きも上がるという効果も出た。しかし、日本ではこのメリットは生きてこない。iPhoneの取り扱いをせず、サムスン製品を大きくフィーチャーしているNTTドコモは、MNPによる流出がとまらずシェアを落とし続けている。ドコモもアップルとサムスンの戦いを、手に汗を握りながら見ていることだろう。
裁判の内容がそれぞれ異なるので、何勝何敗という結果では、どちらが勝ったのかは判断できない。さらに、企業の存亡に関わるような判決も、そうそう出ないと思われる。筆者としては、数年後に、ある程度のところで手打ちをするか、うやむやになると予想している。
どちらにせよ、この戦いで大きく儲けるのは、世界中の法曹関係者であることは間違いない。
(文=柳谷智宣/ITライター)