近年、「家でもおいしいコーヒーを飲みたい」というニーズが高まっている。その背景には、日本のコーヒー文化の急速な深化がある。
1990年代にスターバックスコーヒーが日本に上陸し、シアトル系に代表されるエスプレッソベースのコーヒーが人気となり、本格的なコーヒーを楽しむ層が増え始めた。2000年代に入ると高品質な「スペシャルティコーヒー」が日本に本格参入し、専門店も増加して店頭での焙煎も広がった。インターネットが爆発的に普及した時期にもあたり、通信販売などでの豆の入手も以前に比べて容易になった。
さらにおいしいコーヒーブームに拍車をかけたのが、コンビニエンスストア各社の店頭販売だ。一杯ずつ豆から挽いていれるコーヒーが大ヒットして、コーヒー人口を新たに開拓したといえる。こうした背景があって、おいしいコーヒーに対する関心は強まっている。コーヒー生豆の輸入も、ここ10年ほどはおおむね右肩上がりで伸びており、現在は年間40万トン前後となっている。
今年2月、アメリカの人気コーヒーチェーンの「ブルーボトルコーヒー」が東京にオープンしたほか、各地に豆の専門店なども次々とオープンするなど、コーヒーをめぐる競争は激化している。
全日本コーヒー協会の調べによると、コーヒーが最も多く飲まれている場所は家庭で、自宅でおいしいコーヒーを飲みたいというニーズが高まっていることがわかる。こうした動きを受けて、スターバックスやタリーズコーヒーなどのコーヒーチェーンやコーヒー販売会社などが主催するコーヒースクールは盛況で、いつでもおいしいコーヒーを飲みたいという動きは愛好家の間に広がっている。
高機能なコーヒーメーカーが続々登場
よりおいしいコーヒーを求めるブームの中、汎用品より価格は多少高いものの、機能の充実した家庭用のコーヒーメーカーが売れている。市場規模も年々拡大しており、業界では年間230万台程度の販売があるとみられている。
そうした高機能コーヒーメーカーの代表ともいえる存在が、パナソニックの「NC-A56」だ。昨年秋の発売以来、家電の価格比較サイトで上位を占めるなど、根強い人気を誇っている。豆の挽きからドリップ、ミルの洗浄まで全自動で行い、豆の挽きわけは好みに応じて4種類のコーヒーが楽しめる。沸騰浄水によってカルキを90%以上カットできる機能もある(写真)。
また、タイガー魔法瓶の「コーヒーメーカー カフェバリエ(ACT-B040)」は、通常のドリップのほか、UCC上島珈琲のドリップポッドなどが使える。
このほか、デザイン性と機能性を兼ね備えたデロンギの「ケーミックス ドリップコーヒーメーカー プレミアム(CMB5T)」は、ハンドドリップ風の抽出を可能にしたアロマモードを搭載しており、抽出したコーヒーを煮詰めることなく保温できるなど、ユーザーにうれしい仕様となっている。
手軽に本格的なコーヒーを求める消費者の動きは今後も加速することが予想され、メーカーの新商品開発の動きなども注目されそうだ。
(文=中原宏実/経済ジャーナリスト)