だが、そもそも不正会計を生んだ芽を追っていくと、西室氏が経団連会長の椅子を狙い社長・会長として東芝に居座ったことにあるとの指摘も多い。その結果、西室氏の次の社長になった岡村正氏と対立することとなった。
西室泰三氏は7月22日、日本郵政社長としての記者会見で、東芝歴代トップ3人の引責辞任については「早く結論を出した」と評価。辞意を漏らしていた室町正志会長には「残るほうがつらいかもしれないが、あなたに期待する」と自分が話し、社長を兼務するよう説得したことを明らかにした。
「田中(久雄元)社長は、頻繁に相談役の部屋を訪れていました」(東芝幹部)
田中氏が日参していたのは、自分を社長にしてくれた西田厚聰相談役の部屋である。当時、相談役と顧問は17人を超え、西室氏が名実ともに筆頭だ。相談役は、社長や会長らと同じ38階に個室を持っている。相談役である岡村氏と西田氏は毎日出社し、西室氏も日本郵政の上場を間近に控えていて超多忙にもかかわらず毎週必ず出社し、社長や会長に助言していた。危機が表面化して以来、室町氏の西室詣でが続いていた。西室氏は土光敏夫元社長が使っていた部屋に居座っている。西室氏は東芝社内で「スーパートップ」「天皇」と呼ばれている。
「歴代3社長だけでなく、西室氏、そして彼と対立した岡村氏も相談役を辞めるべきだった。西室氏が東芝を立て直す立場にないことを自身が認識しない限り、東芝の再生などあり得ない。室町氏は西田氏と佐々木氏の対立が激化する中で、西田氏が手駒として東芝に復帰させた人物だ。西田派であり、今では西室派ということになる。不正会計が発覚した事業の責任者はクビにされたが、彼等はイエスマンだったが、抗争の犠牲者でもある。再生のためには室町氏を辞めさせて、彼等を残すべきだった。ダメなトップに、事業のことがわからない社外取締役がうじゃうじゃ。ソニーと、まったく同じ構図だ」(東芝関係者)
「西室さんは、郵政上場を果たしたら、『自分が立て直す』といって東芝へ戻ってくる」――。こんなブラックジョークが今、東芝社内に流れている。
(文=編集部)