現在、輸出管理の見直しなどで日韓関係がこじれている。特に、日本政府が韓国向け輸出管理手続きを見直したことのマグニチュードは大きい。7月上旬、政府はフッ化水素をはじめとする特定3品目の輸出手続きを厳格化した後、8月2日には輸出管理を優遇する“ホワイト国”から韓国を除外する政令改正を閣議で決定した。
日韓の関係悪化を受けて、半導体製造装置の有力メーカーの一つである東京エレクトロンをはじめ、日本の半導体関連企業の業績に影響が出ることは避けられない。一部には、日本企業の半導体調達に支障が出るとの懸念もある。
そうした状況下、7月から8月上旬まで、東京エレクトロンなど半導体関連企業の株価推移をみると、市場全体の動きに対して下げが目立つわけではない。この株価動向は冷静に考える必要がある。今後の半導体製造装置メーカーの業績展開によっては、日本経済の先行きがある程度明確になるかもしれない。その意味では、これからの東京エレクトロンの業務展開が注目される。
韓国で収益を伸ばしてきた東京エレクトロン
近年、東京エレクトロンにとって、韓国の半導体製造装置需要の盛り上がりは同社の業績を拡大させるために重要だった。同社の半導体製造装置の売上高を地域別に見ると、2016年3月末の時点で、同社の半導体製造装置売り上げの約16%が韓国だった。北米の割合は韓国とほぼ同じ水準、台湾が26%だった。
一方、2017年3月には、同社の半導体製造装置売上高の30%を台湾が占めた。韓国の割合は18%にとどまった。しかし、2018年3月末には韓国と台湾の割合が逆転し、韓国が売上高の35%を占め、台湾の割合が16%に落ち込んだ。
この背景には、2018年に韓国のサムスン電子などが生産能力の増強のために、半導体製造装置を大量に購入したことがある。韓国勢は世界的な半導体ブームが続くと考えたのだろう。データセンタ向けメモリ需要、中国のIT先端分野への投資増加の恩恵を取り込むために、設備投資を積み増した。半導体業界の専門家によると、当時の韓国勢には“買い漁った”という表現が適切なほどだった。
2018年春先まで、韓国の需要は東京エレクトロンの業績拡大を支える大きな要因だった。ただ、その後はデータセンタ向け設備投資の一巡や世界的なスマートフォンの販売低迷、米中摩擦の激化などが重なり、韓国における東京エレクトロンの半導体製造装置売り上げは減少に転じた。2019年3月期決算、同社はフラットパネルディスプレイ製造装置の販売増加に支えられて、過去最高の営業利益を達成したものの、利益率の水準は前年から低下した。