「しかし、じゅうぶんに物件や地域を精査してから購入しないと、募集しても入居者が入らず空室状態が続き、収益が全く上がらなくなるかもしれません。(略)ここ数年でオーナーになった人の中には、すでにババ抜きゲームにはまっている人もいます。予定していた額の家賃では入居者がつかず、やむなく家賃を下げ、計画を大幅に延期して回収せざるをえない物件もあります。(略)これからは不動産で儲けようとすること自体、基本的に難しい時代です」(同)
また、ワンルームマンションは設備競争が激しいのだという。
「住宅設備が最新。少ない需要を取り込むために必要な装備はすべて整っています。(略)トイレはバス、洗面とは別。浴室乾燥機、食器洗い機、床暖房など最近のワンルームマンションは至れり尽くせりです。共用部はアマゾンなどの宅配物を受け取れるロッカーを設置。女性が気にするセキュリティもばっちりです。(略)築年数の経過したワンルームマンションに空き住戸が増えていくという構図です。賃借人が見つからない、あるいは初期の節税目的をある程度達成してしまったオーナーは住戸を売却しようとしますが、需要のないワンルームを買うお客さんはいないのです」(『2020年マンション大崩壊』より)
中古ワンルームマンションは仲介業者も避ける
『不動産裏物語』(佐々木亮/文春文庫)は、匿名不動産仲介業者による不動産業界の暴露ものだが、中古のワンルームマンションは買い手もいなければ、仲介業者も仲介したがらないという実情を報じている。
「『1000万円のワンルームを売ってください』というお客さんが来ても、仲介手数料を考えたら物件価格の3%だけで考えると、実入りは30万円。(略)30万円のために積極的に動くという業者はなかなかいないため、媒介業者は不動産取引情報提供サイト(REINS)に情報を掲載して放置」(『不動産裏物語』より)するために、市場に中古ワンルームマンションがあふれるのだ。
さらに、投資用ワンルームマンションのローンは住宅ローンではないために提携金融機関がなく、買い手は現金を用意しないといけない。
「ワンルームマンションの分譲会社はノンバンク系のローン会社と提携していることが多いため、新築を購入するときはローンが組める。しかし、一般的な不動産業者はノンバンク系のローン会社と提携しておらず、いきなり案件を持ち込んでも相手にしてもらえない。したがって、中古ワンルームマンションはローン付けができず、現金を持っているお客さんにしか売れないという状況になっている」(同)
「ワンルームマンションは資産となるから、いざというときは売ればいい」といったセールストークが繰り広げられるが、中古マンションは一般的なルートで売りようがないのが現実なのだ。
(文=小石川シンイチ)