倒産して除外された企業
企業合併により、日経平均銘柄から除外になるケースが多いが、なかには倒産して除外になった企業もある。
1975年の興人、78年の北海道炭鉱汽船、チッソがそれだ。興人の代わりには大和ハウス工業が、北炭、チッソの代替は日興証券、野村証券だった。
84年のリッカー、85年の三光汽船のピンチヒッターは大日本製薬(現在の大日本住友製薬)、山之内製薬(現アステラス製薬)だった。産業・企業の盛衰が日経平均採用銘柄に色濃く反映されている。
09年には40銘柄近くが入れ替わり、日経平均株価の連続性(時系列)が損なわれる弊害が議論されたこともあった。
01年に新潟鉄工所、02年の佐藤工業も経営破綻組。準大手ゼネコンの佐藤工業は政治銘柄だった。05年にはカネボウが除外となった。
01年に採用されたJALは10年に経営破綻で除外となり、たった9年の命だった。JALは民主党政権下で唯一、再生された企業で再上場を果たした。もし、日経平均に採用されれば、ZOZO以上に関心を呼ぶこともあり得る。
最近の事例では、16年のシャープ、17年の東芝、19年の千代田化工建設の3社が、業績不振で債務超過となり、東証1部から同2部に降格になり日経採用銘柄でなくなった。
ZOZOが日経平均に採用されるリスク
ZOZOは前澤友作社長のワンマン・カンパニーだ。ベテランの証券会社社員は「強いアクセルはあるが、企業存亡の時にブレーキが利かなくなるリスクがあるのでは」と危惧する。
11年に除外になった三洋電機は、パナソニックに身売り(吸収合併)されたが、井植一族の会社だった。三洋電機は“関西の家電ビッグスリー”の1社として安価な家電を多く出し、「サンヨー」の商品は家電量販店で売れ筋だった時期もある。社会人スポーツでもラグビーなどで強力チームをつくり活躍したが、シャープに抜かれ、“関西家電の雄”パナソニックの軍門に下った。
19年にアジア系ファンドに身売りして上場廃止になったパイオニアも松本一族の会社。オーディオ御三家の筆頭だったが、薄型テレビに失敗して会社が事実上消滅した。
ZOZOも、新規事業に進出するときに大きな転機が訪れる可能性がある。日経平均銘柄に採用する際には、パイオニア的リスクを考えておかなければならないのかもしれない。
05年に経営破綻によって日経平均銘柄から除外されたカネボウも、一世を風靡した経営者がいて、きらきら輝いていた時期があった。しかし、粉飾決算でアウトになった。ZOZOに財務上のリスクがないのか、気になるところだ。
クラリオンは1999年に採用されたが、2010年に親会社の日立製作所が外資に身売りをして上場廃止となり、日経平均銘柄から姿を消した。クラリオンは「クラリオンガールコンテスト」など、派手なイベントで有名だった。日立グループのなかでも異色の企業だったが、カーオーディオに代わるニュービジネスが生まれず、身売りとなった。派手なイベントを好む経営者の企業も短命というジンクスがある。
日経平均採用銘柄になると、企業としての“品格”が求められる。ZOZOは新興市場から東証1部への昇格はスムーズだった。だが、東証1部上場企業になって前澤社長に対する風当たりは強くなった。日経平均採用銘柄になれば、さらに強くなるのは必至だ。
「ジャンク債を買い漁っている海外のファンドが、ZOZOが本当に日経平均採用銘柄になるのかどうか、熱心に情報収集していた」(兜町筋)との情報がある。中堅証券会社の営業担当取締役は「東京海上グループ系のファンドがZOZOを大量に組み入れている。“怖いもの見たさ”の買い需要はありそうだ」と分析する。
ただ、名の通った機関投資家のトップは「投資する基準(コード)のなかで、経営者の資質の比重が高くなっている。投資して損失を出した時に説明がつかない銘柄には投資しづらい」と打ち明ける。
“米中貿易戦争”でハイテク銘柄には手を出せない状況が続いている。他方、ZOZOは内需関連(小売り)であるため、消去法で買われる場面はあるかもしれない。とはいっても、総合的に考えて、ZOZOを日経平均銘柄に採用するには、相当な勇気がいることだけは確かだ。新興銘柄のZOZOを採用することによって、フトコロの深さを示すことはできるかもしれないが、「値がさ株ゆえに日経平均株価の振れ幅が大きくなる」という副次的な理由で任天堂の採用に二の足を踏んでいる日経新聞が、はたしてZOZOを採用するのか。
(文=編集部)