花王は8月26日、化粧品事業の看板ブランド「ソフィーナ」の情報発信拠点「ソフィーナビューティパワーステーション」を11月13日から東京・銀座にオープン、同時にソフィーナの新シリーズ「ソフィーナiP」を11月13日に同拠点で先行発売し、16年1月から全国百貨店で発売すると発表した。
澤田道隆社長は7月28日の15年12月期中間決算発表会で「化粧品事業の立て直しは今後20年、30年先まで続く大改革になる。下期からその第一弾を開始する」と宣言しており、銀座拠点開設とソフィーナiP発売を「化粧品大改革の第一弾」と位置づけている。
業績低迷が続く化粧品事業の立て直しにやっと本腰を入れたかたちだが、お荷物のカネボウ化粧品事業の再建も未だ道半ば。業界関係者のなかには「念願の化粧品事業育成を20年、30年もののんびりとした取り組みで本当にできるのか」と、同社の本気度に首を傾げる向きが多い。
紙おむつに稼ぎを頼る不安
同社は15年12月期の中間連結決算で、過去最高となる連結営業利益601億円を稼ぎ出した。その稼ぎ頭となったのは、中国人観光客の「爆買い」でも話題になった紙おむつだった。紙おむつを含むヒューマンヘルスケア事業の売上高は、前期比21.2%増の1329億円。営業利益はコストダウンなども奏功し前期比2.0倍の144億円を叩き出した。その一方で、カネボウ化粧品を含む化粧品事業の売上高は1147億円で前期比6.7%の減少、営業利益は154億円の赤字だった。
このアンバランスな営業利益に、澤田社長は非常な危機感を抱いたといわれている。紙おむつの「メリーズ」は、山形県の酒田工場で生産増強をしているにもかかわらず店頭での品薄状況が続いている。しかし、08年の約1億3000万人をピークに本格的な人口減少が予測されている今、紙おむつ市場が将来的に縮小するのは目に見えているからだ。経営者として今の「紙おむつ景気」に浮かれているわけにいかないのは当然だろう。
そこで澤田社長が「ポスト紙おむつ」の収益柱として本格的に育成しようとしているのが、粗利益率の高い化粧品事業であり、今回の長期経営構想が化粧品事業の本格的建て直し行動となって現れている。
だが、現実は厳しい。花王にとって「化粧品事業は疫病神のようなもの」(同社役員OB)だからだ。