松本氏は、「(ココカラとであれば)収益改善に取り組めると判断した。当社も昔はココカラの利益率と同じくらいだった。(ココカラもマツキヨと同様に)食品ではなく、美容と健康を重視している」と、利益重視路線を変えたわけではないと主張した。さらに、こうも語っている。
「売上高だけを求めるなら、まったく違う業態を買収することもできる。医薬品・化粧品といったカテゴリーでの売り上げ増が一番ということだ」
これは、国内ではイオンと規模の競争をしないということを意味する。イオンはドラッグストアの一大勢力だ。現在首位のツルハホールディングスに13%出資し、さらに2位のウエルシアホールディングスは子会社だ。イオンが主導するドラッグストア連合「ハピコム」は約5000店の規模がある。マツキヨとココカラを合わせても3000店。数の上では勝負にならない。
マツキヨにもウィークポイントがある。既存店の売上高の前年割れが続いていることだ。かつてドラッグストアの代名詞だったマツキヨは、いまや国内では勝ち組とはいえなくなった。
【マツキヨの既存店売上高】(前年同月比)
4月 ▲4.2%
5月 ▲1.8%
6月 ▲1.9%
7月 ▲4.9%
(資料:マツモトキヨシホールディングス、売上月次報告。▲はマイナス)
「屋号(店舗名)については、これから話し合う。ココカラとマツキヨにそれぞれの良さがあるので、変えないという選択肢もあり得る」(松本氏)とした。
マツキヨの強みは、インバウンド需要を上手に取り込んでいる点だ。インバウンドは訪日前、訪日中、訪日後の三段階の取り組みで安定的な成長を継続している。19年3月期の免税売上高は前期比15.5%増。全売上高に占める割合は13%を超えた。
来店客の国籍は中国が圧倒的に多く、訪日中国人の72%が化粧品を購入している。対話アプリ「微信(ウィーチャット)」で中国の消費者に直接新商品を告知し、訪日時の来店を促している。免税売上高に占める訪日前の接点(情報提供)が貢献した売上高は51%を超えた。
訪日後は越境ECにつなげる。越境ECの売上規模は19年3月期時点で、2年前に比べて2.2倍に拡大した。海外店舗は17年3月期8店舗、18年同期18店舗、19年同期35店舗と着実に増えている。海外店舗の売上高は2年前の4倍に増えたという。
海外展開に関して、松本氏は「台湾やタイに店舗があり、来年は香港やベトナムに出す。マレーシアやシンガポールにも進出したい。国内需要が減っていくなか、アジア(の消費者のニーズ)に対応できる企業でありたい」とした。
東南アジアでは健康志向が高まっており、日本の健康食品などの需要が見込めると判断している。インバウンド需要で手応えを感じたことで「アジアで一番のドラッグストアを目指す」と宣言したのである。
(文=編集部)