個人を食い物にする構図
一方で、冒頭で記したように、もうひとつ大きな問題になっているのが、法人契約だ。個人契約が、すべてのユーザーに共通して適用を迫られる約款に縛られるのに対して、法人契約は約款規制がなく相対で契約条件を決められるので、携帯3社がそろって個人向けサービスでは考えられない格安サービスを提供しているのである。筆者が把握しているだけでも、数万を超す大口契約を結んでいる大企業では月額500円、2000件程度のユーザーでは月額1000円といった料金のスマホや携帯電話のサービスが実在する。
法人向けサービスには、個人向けと違って販売経費が少なくて済むとか、他のソリューション・サービスが期待できるなど、違う要因があることは事実である。しかし、個人向けサービスで月額5000~7000円以上とみられるバカ高い料金を徴収しているからこそ、格安法人サービスが可能という面もある。この個人を食い物にする構図を徹底的に調査してメスを入れなければ、家計の重荷を取り除くことは不可能である。
劇薬しか方策はないのか?
料金引き下げ問題について、旧郵政省時代からすでに20年近くにわたって政府が低廉化を要請しても、体よく携帯事業者に無視されてきた背景にも着目するべきだろう。旧郵政省が1995年に、携帯料金の認可制度を撤廃し、事業者が自由に設定できるようにしたことが根本的な原因になっている。
当時に比べて、事業者の淘汰が進み各社の市場支配力が高まったのに、第3、第4世代の携帯電話サービス開始に当たっての周波数割り当てで既存事業者だけに周波数を割り当ててきたことが、市場の寡占化に拍車をかけて、料金の高止まりを野放しにする結果になった面も否定できない。
中長期的に解決していくのならば、2020年以降にサービス開始が見込まれる第5世代携帯電話の周波数割り当てで、既存事業者を外し、新規参入事業者だけに割り当てることが肝要だ。そんなには待てない、もっと迅速に成果をあげたいというのであれば、劇薬だが、料金規制を復活させるしか方策はない。
高市大臣、ここは思案のしどころである。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)