しかも、01年に過去最高の売上高1兆7,075億円を記録して以来、10年連続で売上高は下降しており、この10年で売上はちょうど半分になっているのだ。同様に営業利益や経常利益も半分。最終利益については約5分の1となってしまっている。とても、業績好調といえないことは明白であろう。
さらに、あまり大きく報道されていないが、日本IBM関連の事件は結構多く存在しているのである。06年以降で、日本IBMが訴えられたり、事件の主体となったりした代表的な事例をみていこう。
【06年】
・会計検査院による検査で、日本IBMが独立行政法人情報通信研究機構から受託していた研究2件に関し、実際には従事していない研究員の労働時間を含め人件費を請求していたと指摘を受ける
【07年】
・東京リース株式会社が、販売代金153億4,100万円の債務履行と遅延利息の支払いを求め、日本IBMなど4社を東京地裁に提訴
・ソースネクスト社が、ホームページ・ビルダーのライセンス供与に関して契約違反として提訴。08年7月に一部和解が成立
【08年】
・スルガ銀行が「日本IBMの債務不履行によりシステムが完成せず、開発を中止せざるを得なくなった」として111億700万円の損害賠償訴訟を起こす。12年3月、東京地裁はスルガ銀行の訴えを認め、日本IBMに約74億1,000万円の支払いを命じる
【09年】
・福岡銀行で前年に発生したIBM製基本ソフトウェアのバグによるシステム障害に続いて、今度は日本IBM保守要員の作業ミスが原因でシステム障害が発生。福岡銀行が日本IBMに対して損害賠償を検討中と報道される
・08年に行われた、「3カ月で1,500名の社員を退職させる」大規模な退職勧奨プログラムの中で、上司による人格否定、威嚇行為、誹謗中傷などの人権侵害を伴う組織的な退職強要があったとして、社員4名が「人権侵害を伴う退職強要の差し止め」と損害賠償を求めて提訴
【10年】
・雑誌「プレジデント」(プレジデント社/5月3日号)の特集「働きがい」で、「IT業界部門の働きがいワースト企業」と報道される
・ゆうちょ銀行で発生した「民営化後最大」といわれるシステム障害は、IBM製磁気ディスク装置の制御プログラムのバグによるものとして、ゆうちょ銀がIBMへの損害賠償請求を検討中と報道される
【12年】
・最高顧問の大歳卓麻氏が、一身上の都合による退職直前に、東京都迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で警視庁により取り調べを受けていたことが報道される
いずれも不名誉な事件ばかりだ。しかも、これらは微妙に相互関連している。それは「大歳体制によるひずみの表面化」といってもいいかもしれない。
大歳氏が日本IBM社長に就任したのが99年。08年に会長兼務となり、09年から会長。そして今年、12年5月に最高顧問に就任している。この大歳氏こそ、「日本IBMをブラックにした張本人」と言われているのだ。実際、報道されている不祥事は、この時期と合致している。
●リーダーには「首切りノルマを達成せよ」との通達
日本IBMは大歳体制下の04年、人事業績評価制度として、従業員個人の目標管理型業務評価制度「PBC」を導入した。これは、業績評価上位から
「1」(最大貢献、10~20%)
「2+」(平均を上回る貢献)
「2」(着実な貢献、2+と合わせて65~85%)
「3」(低い貢献)
「4」(極めて低い貢献、3と合わせて5~15%)
の5段階を設定し、ボーナス額や昇給額決定にあたって考慮する指標となるものであった。