キリンとの統合破綻も影を落とす?サントリー有力子会社上場のウラ
少子高齢化など国内市場の縮小という深刻な問題を抱えるなかで、サントリーの総帥・佐治信忠氏は、海外の事業を強化するためのM&Aに軸足を移した。09年2月に持ち株会社、サントリーHDに移行したのは、M&Aに力を入れるためである。数年以内に海外の売り上げを5000億円、海外売上高比率を21%から25%にまで高める方針を打ち出している。
同社は、09年2月にニュージーランドの飲料大手、フルコアを750億円で買収。続いて同年9月には仏飲料大手、オランジーナ・シュウェップスを3000億円で買収。今年6月には中国の青島ビールと中国国内でのビール販売強化のために合弁会社を設立すると発表。10月には米清涼飲料大手、ペプシコのベトナム現地法人に過半数の出資をすることで合意した。12月には「ジムビーム」などで知られる米2位のバーボンウイスキーメーカー、ビームの買収を検討していることが明らかになった。
国内・海外の食品・飲料を束ねる統括会社として11年に設立したのが、今回、上場を決めたサントリー食品インターナショナルである。サントリーといえばビールや洋酒のイメージが強いが主力は飲料・食品である。サントリー食品の11年12月期の売上高は9706億円。サントリーHDのそれ(1兆8028億円)の5割強を占める。ビールやウイスキーなどのサントリー酒類は5237億円、ワイン、健康食品や外食事業の3部門の合計で3085億円である。
海外でのM&Aを加速させた結果、11年12月期の長短借入金と社債の残高が6629億円に膨らんだ。海外企業の買収額は年々高騰しており、スイスのネスレや仏ダノンに対抗してM&Aを続けるには、銀行からの借り入れに頼る経営では限界が見えてきた。株式を公開して資金調達のパイプを多様化するのは当然の選択だ。
持ち株会社を上場させるのが普通だが、サントリーは親会社は非上場のままで、中核子会社を上場させる。こういうイレギュラーな上場方法を採ったのは、お家の事情があるからだ。
●創業家の支配を強める寿不動産と、存続のためのカラクリ
サントリーHDは創業家の資産管理会社、寿不動産が発行済み株式の89.32%を保有する同族企業だ。10年に世紀の大型合併といわれたサントリーHDとキリンホールディングスの統合交渉が破談したのは、寿不動産の存在がネックになったからだ。