反省なき大塚社長に付ける薬なし
無策な経営に付き合わされている社員たちは気の毒ではある。が、3年連続赤字でさらに今年も同じ状況に陥っているのだから、変革しようとする議論が社内で起こってもおかしくない。なぜそうならないのだろうか。経営に問題はない、ということで、異論を封じ込めているからだという。
大塚社長は決算発表でも「去年大幅値引きセールをやった反動」「風評被害に会った」「システム改善でバグが出たので遅れた」という具合に、他人のせいにするのがとても得意で、自分の施策を顧みたり反省したりすることはないそうだ。というか「心底、他責要因で会社が悪くなったと思っているからついていけない」(大塚家具を辞めた社員)という声も聞く。残っている社員も薄々わかっているが、“姫”と心中してもいい、という思いなのだろうか。
取締役はもう少し重い立場にあるのではないだろうか。もっとも社内取締役に多くを期待するのは無理だという声もある。NO.2の佐野春生専務執行役員は大塚社長の妹婿で、長年商品調達を取り仕切ってきた。社内で「ブラックボックス」と言われる在庫の山について、責任を問われるのを恐れている、という見方もある。他の2人も社長の顔色を窺っているだけ、というよくあるタイプの取締役のようだ。
手を拱いている取締役に株主代表訴訟リスク
社外取締役は住友商事やトヨタ自動車の要職に就いてきた人たちで、大塚家具の経営実態はお見通しであるはずなのに、何をしているのだろうか。中国ビジネスについて大塚社長とあれほど蜜月ぶりだった陳海波取締役は、社長との間に隙間風が吹いているようだ。
「社外から呼んできた人たちと最初は関係はいいが、彼女の本当の姿がわかってくるとみんな退いていく。これまでもそうだった」(社内関係者)
一部報道では、大塚家の資産管理会社で大塚家具の筆頭株主だったききょう企画は、銀行借り入れの担保として保有株を差し出していたが、銀行が担保権を行使してこの株を売却した。すでに大塚家は大株主ではなくなっているのだ。再建に失敗したうえ、銀行に株式を巻き上げられ、中国の出資者と隙間風が吹き始めた大塚社長はすでに社内外で孤立を深めている。
それでも取締役の責任は免れない。内部情報に接する立場にいて、時々刻々と経営が悪化していく状況をわかっているだろうから、不作為のまま不測の事態に陥った場合、善管注意義務を問われることになりかねない。取締役に対して株主代表訴訟が起こらないとは限らない。社長の道連れとなる人が少ないことを祈る。
(文=山口義正/ジャーナリスト)
●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)