「貸玉」や「交換」など独自の慣習があるパチンコ業界では、10月からの消費税率10%への引き上げ分を価格に転嫁するのが難しく、多くのホールが増税分を吸収する「実質値下げ」状態になるともいわれている。昨今の売り上げ低迷に加えて増税吸収分のダブルパンチで、廃業に追い込まれるホールも増えると予想されているのが実情だ。
今回の消費増税は、軽減税率の導入やプレミアム商品券の配布、キャッシュレス決済によるポイント還元など、さまざまな条件が重なって複雑化しているが、パチンコ業界も例外ではない。そもそも、客側はあまり意識していないが、パチンコ・パチスロでは遊技時の貸玉と貸メダルの料金に消費税が含まれている。
「消費税5%の頃まではホール側が消費税分を負担し、4円パチンコは1000円で250玉、スロットは1000円で50枚のままでした。しかし、2014年に消費税が8%に上がったときは店側も負担しきれなくなり、多くの店でパチスロは貸しメダルを47枚に減らすなど、個数調整方式で消費税分を転嫁しました。パチンコも232玉に減らした店があります」(パチンコ業界関係者)
しかし、こうした調整は各店の個別対応となっているのが現実で、全店で貸玉や貸メダルの数を統一することはできていない。その理由は、各ホールが各地域の業界団体などに入っており、それぞれ基準が異なっているからだという。そのため、同じチェーン店でも地域によって貸玉や貸メダルの数が異なることがあるのだ。
増税分を負担できるホールは少ない
今回の消費増税におけるホールの対策は、主に2つに分かれる。
(1)遊技料金を変更せず増税分はホールが負担(実質値下げ)
(2)個数調整方式で増税分はユーザーが負担(実質値上げ)
これまでは(2)を選択するホールが多かったのは前述した通りだが、今回はどうなるのだろうか。
「今のところ、据え置きか個数調整かの結論は出ていません。東京をはじめ各地域で統一したルールをつくろうという話も出ましたが、何も決まっていないのが現状です。いわば、パチンコ業界は宙ぶらりんなのです」(同)
パチンコ業界はかねてから苦境が伝えられるが、客側にとってうれしい(1)、つまり価格据え置きを選択する可能性はあるのだろうか。
「パチンコ業界の現状を見ると、増税分を店側が負担できる体力がない会社が多いと思います。おそらく、貸玉や貸メダルの個数をそれぞれ228玉、46枚(上限)と減らす店が多いのではないでしょうか。ただし、現状の232玉、47枚のままで営業しても違法ではないので、企業努力で据え置きを選ぶ店もあるとは思います」(同)
帝国データバンクの調査によると、18年までの決算内容が判明しているパチンコホール経営業者1892社の18年の売り上げは15兆8438億円と、14年の19兆5090億円から約3.7兆円も減少している。1996年頃のピーク時には30兆円市場ともいわれたパチンコ業界だが、もはやその面影はない。
パチンコ業界を脅かすカジノ利権
パチンコ業界が直面する問題は消費増税だけではない。むしろ、増税よりも関係者の頭を悩ませる問題があるという。
「昨年から、パチスロでは新基準に準拠した6号機が導入され始めています。これは、5号機までの遊技台よりも射幸性が低い。つまり、大勝ちできる可能性が極めて低くなっているのです。出玉が少ない分、長く遊べるとされていますが、ユーザーからの人気はありません」(同)