日本企業が長年の開発で培った最新技術が、中国企業に流出…怒涛の半導体業界再編の深層
今後の微細化のカギを握るのは、シリコンウエハに回路パタンを転写する露光装置だが、15年以上にわたって開発が進められてきた次世代露光装置EUV(Extreme ultraviolet lithography)に、やっと量産のメドがたってきた。したがって、微細化は止まることなく続いていくだろう。
次に、「半導体市場が低成長となり、鉄鋼業のように成熟産業になってきた」とは本当だろうか。図4に、世界の半導体出荷個数、平均販売価格の推移を示す。出荷個数は、ITバブル崩壊後の01年とリーマン・ショック後の09年の2点を除けば、ほぼ直線的に増加している。平均して毎年約250億個ずつ増えている。一方、平均販売価格は95年や00年に大きなピークがあるなど、乱高下している。しかし、次第に乱高下は収まり、10年以降は約0.43ドルに収束していることがわかる。
以上のデータを使って計算すると、今後世界半導体市場は毎年107億ドル(=250億個×0.43ドル)ずつ増大すると予測できる。市場規模の短期的な乱高下は今後もあるかもしれないが、長期的には半導体市場は順調に成長するだろう。こう断言できるのは、人類が文化的生活を維持するために、半導体が不可欠なものになっているからである。したがって、半導体市場が低成長になる根拠はない。
また、半導体集積回路の基本素子であるトランジスタ一つとっても、平面型(プレーナ型)から、マルチゲート(FinFET)またはFD-SOIを経て、ゲート・オール・アラウンド(GAA)、そしてナノワイヤを用いたトランジスタへと進化しつつある(図5)。これだけをみても、半導体の技術が鉄鋼業のように成熟しているとはいえないだろう。
何が大型M&Aを引き起こしているか?
では、何が大型M&Aの起爆剤になっているのか。かつてM&Aには、シナジー効果「1+1=3」が期待されることが多かった。しかし、スピードが重要な経営要素となった現在では、単純に「1+1=2」を目指すM&Aが増えてきているように思う。
「1+1=2」を目指すM&Aとは、「単純に規模を増大する」こと、および「手っ取り早く技術を手に入れる」ことである。
例えば、インフィニオンによるレクティファイアー買収は、自動車などに使われるパワー半導体で、世界シェアトップになることが目的である。NXPによるフリースケールの買収は、IoTデバイス化が進むクルマ用半導体が狙いである。この合併により上記連合が、日本のルネサスを抜いてシェアトップになる。