日本企業が長年の開発で培った最新技術が、中国企業に流出…怒涛の半導体業界再編の深層
アバゴによるブロードコムの買収は、ネット接続デバイスの通信半導体の制覇が狙いである。インテルによるアルテラの買収は、「IoTとビッグデータ」時代の到来で増大するデータセンタ用FPGAがターゲットである。FPGAとは、チップ製造後にプログラムが可能な半導体で、米ザイリンクスと並んでアルテラが世界の2強である。デルによるEMC買収は、不振のPCメーカーから脱皮し、IoTの普及で増大が見込まれるサーバー事業の強化が目的である。電源コントローラICのダイアログは、マイコンを得意とするアトメルを買収することによって、IoT関連のウエアラブル端末やネットデバイス化する自動車用半導体をターゲットにしている。
イメージセンサーで世界シェア1位のソニーは、東芝のCMOSセンサー事業を買収することにより、市場シェアを増大することを目指している。ドライエッチング装置シェア1位のラムリサーチは、半導体の検査装置1位のKLA-Tencorを買収することにより、装置業界のランキングで2位に躍進する。
中国のM&Aは「0+1=1」
図1の中に、中国企業によるM&Aが5件ある(黄色で示した)。中国企業によるM&Aは、「0+1=1」ではないかと思っている。というのは、中国には半導体の製造技術が決定的に足りない(もしくは無い)。そこで、ない技術を手に入れるために、金にものを言わせて買ってくるからである。その背景には、中国の半導体事情と中国政府による半導体政策がある。
14年の中国の半導体市場は980億ドルで、世界半導体市場3330億ドルの29.4%を消費していることになる。これは、中国が“世界の工場”となり、また経済発展を遂げたために、中国が大量の半導体を必要としているからである。
ところが、14年に中国で製造された半導体は、125億ドル分しかない。中国の半導体の自給率は、たったの12.8%である。つまり、中国では半導体の自給がまったく追い付いていないのである。私見だが、中国が半導体製造を苦手としていることに原因があると考えている。
そこで、習近平国家主席は、半導体自給率の大幅向上のために14年6月に半導体新興を目指す「国家IC産業発展推進ガイドライン」を制定し、融資枠1200億元(約2.3兆円)の「中国IC産業ファンド」を設立した。中国Uphill InvestmentによるメモリメーカーISSI買収、中国Hua CapitalによるCMOSセンサーメーカーのOmniVision Technologies買収、中国JAC CapitalによるNXPのRF事業部買収、中国・紫光集団によるDRAMやNANDフラッシュなどのメモリ大手のマイクロンへの買収提案は、このような背景で行われたものであろう。