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「クラチカ ヨシダ 表参道」の工房で作業する村林麗子氏と安藤学氏
創業者の吉蔵氏が亡くなったのは1994年なので、今では吉蔵氏の薫陶を直に受けた同社社員も少なくなった。その理念をなんとか受け継いでいこうとする活動に思える。
業種も規模も違うが、かつて日本をリードした大企業の業績不振や不祥事を見ると、「いまの会社を創業者が見たら、どう感じるか」といった思いを抱いてしまう。たとえば、現在のパナソニックやホンダ(本田技研工業)を、松下幸之助氏や本田宗一郎氏がご覧になったらどう思うのか。「粉飾決算」を行った東芝においては、いわずもがなだ。
吉蔵氏は生前、こうも話していた。
「お客さまに買ってよかったと思われる、喜ばれるカバンをつくること」
「カバンを100個つくったとしても、お客さまにとっては、その方が手に取った1個がすべて。個々を大事にして不良は出さないように1針1針を丁寧に」
創業者・吉田吉蔵氏が使用したミシンとトランク
90年代半ばに比べて企業規模が倍増した同社だが、吉田社長は「無理な規模拡大はしません。もし品質が損なわれるような恐れが出れば、生産を抑えます」とも語っていた。今後、事業展開を広げる場合、同社にも人材のさらなる成長といった課題は残るが、少なくとも「創業の理念や志に立ち返る」姿勢と「品質の徹底追求」という視点において、多くの企業が参考になる事例ではないだろうか。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
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