増税前に値下げラッシュが起こっているのは異常事態だ。
「長崎ちゃんぽん」のリンガーハットは8月1日からランチメニューに餃子5個とご飯、スープ、漬物で税抜き370円の「格安セット」を投入した。人気の「ちゃんぽん」と餃子5個のセットの定価を700円から690円に下げた。
デフレ不況が再燃の懸念
過度な価格引き下げ競争が広がれば、デフレ不況が再燃しかねない。客足をつなぎ留めるために値段を上下させるのは、企業にとってはデメリットも大きいが、各社とも“目先の利益”の確保に血眼になっている。
株式市場では「増税耐久力」が試されている。サイゼリヤの株価が9月下旬、年初来高値を連日更新した。同社は子連れにも人気の低単価のファミリーレストランを展開している。10月からの消費増税に合わせて実施される「幼児教育・保育の無償化」の恩恵を受けるというのだ。無償化で余裕が生じ、余ったお金を外食に回すというシナリオが描かれている。「消費増税の耐久力のある銘柄」(消費関連業界担当のアナリスト)との評価を得たのが株価上昇につながった。
同様の切り口で、すかいらーくホールディングスの株価も堅調である。テイクアウトに強みを持つカレーの壱番屋は8月に高値を更新した。個人消費が低調なのは、給料が上がらないからである。もともと40~50代の給料は頭打ちになっていたが、働き方改革によって残業代が減って、さらに手取り賃金が下がった。給料が下がれば消費に回すお金の余裕がなくなる。残業代が減り、消費税が上がる。さらに老後に2000万円ためなければならないとなれば、サイフのひもが緩むわけがない。
軽減税率は富裕層によりメリットが大きい、との指摘がある。鶏肉と牛肉を買おうとする場合、牛肉を買う人のほうが絶対額で得をする仕組みだからだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「一人ひとりが生活を守るために、カネを使うな」「これだけ先が見えず、デフレの時代。借金を減らして現金を増やすことが一番大切」と提唱する。消費税率が10%になるのを機に、人々の節約傾向が強まるかもしれない。
(文=編集部)