VWは7~9月期にリコール(無料の回収・修理)費用を中心に66億8500万ユーロ(8900億円)を一時費用として計上した。その結果、同期の最終損益は17億3100万ユーロ(2300億円)の赤字となった。7~9月期は不正によるブランド毀損の販売面への影響はまだ軽微だったが、10月以降は予断を許さない。当然、VWの経営は一段と悪化する。問題発覚後、VWの株式時価総額は3分の1にあたる4兆円を一時、失った。
VWショックは日本企業を直撃した。東京株式市場で自動車関連銘柄は軒並み売られた。完成車メーカーではマツダやいすゞ自動車の株価が一時、急落した。マツダは欧米でディーゼル車を幅広く展開。いすゞはディーゼルトラックを販売している。マツダは「全てのガソリンおよびディーゼルエンジンを、各国の規制に厳格に適合させており、違法なソフトウェア、ディフィートデバイス(無効化機能)は一切使用しておりません」というリリースを発表した。
日本メーカーの中でもVWとの関係が深かったのはスズキだ。スズキはVWと資本提携していたが、8月に解消した。両社の対立のきっかけとなったのは、ディーゼルエンジンである。09年の提携当時、スズキはディーゼルエンジンを持っていなかった。VWからの技術提供を期待したが、VWは応じなかった。そこで、フィアット・クライスラー・オートモービルズから技術供与を受けたため、VWとの間の溝が深まった。もしVWからディーゼルエンジンの供給を受けていたら、スズキにも不正疑惑の目が向けられていた可能性もある。
スズキは保有していたVW株式をすべて売却。7~9月期に売却益367億円を特別利益として計上する。スズキが保有するVW株の時価は、3月末に比べて700億円目減りした。9月17日にVWが保有する株式(19.9%)を4600億円で買い戻した。完全に縁が切れ、VWショックを免れた。
取引先企業に影響広がる
VWの取引先企業では、日本ガイシ、フジクラ、IHIの株価下落が目立った。日本ガイシはディーゼル車に欠かせない排ガス浄化装置を主力とし、ポーランド工場で生産する粒子状物質低減装置(DPF)の最大顧客がVWグループだ。フジクラはワイヤーハーネス(自動車用の組み電線)の取引の半分がVWグループ向けだ。VWが大規模減産に踏み切った場合、一部工場の閉鎖も視野に入れているという。IHIは自動車用ターボ・チャージャー(排気ガスのエネルギーを利用する過給器)の大手でVW向け取引が3割を占める。