たとえば、大阪市健康局健康推進部生活衛生課は、筆者が当局管轄内で発見した違法表示を通告したところ、「頂いた情報に基づいて、早急に指導に入ります。また結果は報告させていただきます」と返答し、実際にすぐ問題業者の広告表記は改善した。そして「事業者にはすぐに指導を行い、結果としてサイトの表記が改善したところも確認しました」という報告まで受けた。
一方で東京都の福祉保健局健康安全部薬務課監視指導係には度重なる通告を行っているものの、まだ改善が見られない業者も残っているのが現状だ。担当者に「なぜ指導効果が現れないのか?」「どんな指導を行っているのか?」と確認しても、「さまざまな要因によって改善までに時間を要するケースが生じていることも事実でございます」「個別の事案の対応状況等につきましてのご回答は致しかねます」との反応であった。
自治体の薬務課は、医薬品販売が許可制であるため強力な権限を持っているものの、化粧品や健康食品のメーカーに対する権限は相対的に弱く、厳しい指導ができない事情があるようだ。東京都の場合は事業者の数も多く、指導が行き届かない面もあるのかもしれない。
違法業者を見抜く方法
では、違法な広告を展開する業者を見抜く方法はあるのか。
まず大前提として、医薬品とそれ以外の化粧品、健康食品とでは大きく異なる。医薬品の効果は「病気の治癒、改善」であり、化粧品や健康食品に期待できるのは「美容維持」「健康維持」だ。
医薬品でなければ病気の改善はできないので、広告やサイトの文言、もしくは製品の説明書や同梱物を読んで、「あたかも病気や症状が改善しそうに思える」もの、もしくは「実際に症状が改善したというお客様の声」などがあれば、 薬事法違反の可能性が高いとみてよい。化粧品や健康食品でアトピー性皮膚炎など病気の諸症状が治るかのように錯覚させて販売している業者は、薬事法違反を犯している違法企業であり、善良な事業者を出し抜くアンフェアな競争をしている企業であり、かつ病気で苦しんでいる人の不安につけ込む悪意ある会社であるといってよい。
当局には、薬事法に沿った指導を厳格に行い、こうした違法業者が撲滅されることを期待したい。
(文=新田龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)