任天堂は翌29日に経営方針説明会を開催した。君島達己社長は、同社初のスマホゲーム「Miitomo(ミートモ)」を来年3月に配信開始すると発表した。ユーザーがアバター(自分の分身となるキャラクター)を作成すると、友人として登録しているほかのユーザーのアバターと情報交換できる。
市場が期待していたのは、任天堂を代表する人気キャラクター「マリオ」シリーズのスマホゲームだった。第1弾は、コミュニケーションアプリ「ミートモ」。投資家やゲームマニアの間に落胆が広がった。コミュニケーションアプリは儲からないといわれている。年内とされていた発売時期が、来年3月に延期されたことから失望に拍車がかかった。
市場は、この発表を「ネガティブサプライズ」と受け止めた。10月29日、東京株式市場では両社の株の売りが殺到。任天堂の終値は前日終値比2065円安(9.0%下落)の2万945円、DeNAは一時500円安のストップ安となり、終値は365円安(14.9%下落)の2080円まで下げた。米国市場でも任天堂のADR(米国預託証券)は11.7%と大幅に下落した。その後も任天堂は3日連続安で2万円を割り込んだ。一方、DeNAも4日連続の下落。市場の失望感の大きさを示した。
任天堂は3月、DeNAと資本提携を発表。17年までに5タイトルほどのモバイルゲームをリリースすると宣言。第1弾は年内に発表するとしていた。そこに人気キャラクターの「マリオ」や「ヨッシー」が加わる可能性が取り沙汰されてきた。
マリオなどの既存キャラクターがモバイルゲームに登場すれば、新たな収入源になるとの投資家の期待感が株価を押し上げ、任天堂株は70%近く上昇していた。期待が膨らんだ分、落胆は大きかった。しかも、配信開始の延期で16年3月期業績への貢献が見込めなくなり、失望売りが広がったのである。
君島新社長
任天堂がDeNAと提携してスマホゲームに進出するプロジェクトには、暗雲が立ち込めている。提携を推進した岩田聡前社長が7月11日に急逝したからだ。社長ポストは空席という異常事態が続いた。社長がやっと決まったのが2カ月後の9月16日。当時常務だった君島氏が昇格した。