あのサッカー元日本代表が実業家転身…「うんち」を解析→「アスリート菌」発見で大成功
茶色いダイヤ
代表取締役として覚悟ができた鈴木氏は、自ら営業に走り出す。最初に営業に向かったのは、ラグビー日本代表の松島幸太朗選手だった。
「『うんちをちょうだい』と真面目に言う私に松島君は、『エッ?何言ってるの?』と、だいぶ引いてましたね。私の構想を話し、『君のうんちは宝、茶色いダイヤなんだ!』と説得しました」
元サッカー日本代表の鈴木氏の人脈は広く、なんと500人を超えるアスリートから“茶色いダイヤ”を集めることができた。オリンピック金メダリストをはじめ、Jリーガーやプロ野球選手など27種目のアスリートから集めた検体は1000を超えた。
「大学や研究機関で集めた便のDNA解析を行いました。腸内細菌から、どの競技の選手かがわかるほど、腸内細菌には特徴があります。逆にいえば、腸内細菌を見れば選手としての体づくりをどうするべきかがわかります。腸内細菌の解析は世界レベルのアスリート育成に欠かせないアプローチなんです」
競技によってアスリートの腸内細菌のバランスが異なるというから驚きだ。そういった研究の成果が実り、アスリート特有の菌を発見することができ、「アスリート菌」という商標を取得した。こうした鈴木氏の研究に多くの企業が注目し、現在は食品メーカーとの共同研究も進行中だ。
倒産の危機
今年4月には、腸内細菌を検査できるキットの開発、テスト販売に成功した。その一方で、鈴木氏は困難に直面していた。
「実はあの頃、創業以来もっともつらい時期を過ごしていました。資金があと2カ月で底をつくのが見えていて、金策に奔走していました」
そんな鈴木氏の様子に、一部の社員は「何かある」と感じていたといいます。
「気合いと根性しかないと、とにかくたくさんのベンチャーキャピタルや投資家に会い、事業の素晴らしさをアピールしました。しかし、理解されない日が続きました。夜は眠れないし、冷や汗は出てくるし、自分が自分じゃない感じでした。もはや倒産しかない、とあきらめかけたときに、気合いと根性が実り、複数の投資家からの出資が決まったのです」
そんな苦境でもあきらめず乗り越えることができたのは、バランスの良い腸内細菌に支えられた鈴木氏の強いメンタルのなせる業だろう。
アスリート菌ミックス
倒産の危機を乗り越え、これまでの研究から得た知見を生かし、酪酸菌を中心に29種類の菌を配合した「アスリート菌ミックス」を開発し、このアスリート菌ミックスを配合したサプリメント『AuB BASE(オーブベース)』が12月16日に発売される予定だ。
「一般の方を対象にした検証では、オーブベースの摂取により腸内細菌の多様性を平均7.5%、酪酸菌を3.7%増加させたとの結果が得られています。30~40代のビジネスアスリートをターゲットとし、毎日のコンディションづくりのお役に立てればと思っています」
現在、クラウドファンディング「マクアケ」で、11月29日までオーブベースの先行販売を行っている。
「支援者へのリターンとして『AuB フットサル部』をつくり、ファンと一緒にフットサルを楽しみながら腸活ができるファンコミュニティプランを計画しています。多くの方に参加していただき、一緒に腸活を広めていけたらと願っています」
サッカー元日本代表から実業家へ転身し、倒産の危機を乗り越え人生を大逆転した鈴木氏の夢は、さらに大きく膨らむ。
「子供の頃から母の教えてくれた腸活でサッカーもビジネスも乗り切れたと改めて実感しています。私にとって腸活は、人生を支える欠かせないものです。支えてくださった方々への感謝の気持ちを込めて、腸活を多くの人に伝えていきたいです」
(構成=道明寺美清/ライター)