国内文具最大手のコクヨが突如、間接的ながら筆記具大手ぺんてる(非上場)の筆頭株主になったことで注目された文具業界のM&A(合併・買収)は、4カ月を経て、新しい局面に移った。
コクヨは9月24日、投資ファンドを通じて間接的に出資していたぺんてるに直接出資した。ぺんてるは同日の取締役会でファンドからコクヨへの株式譲渡を承認。コクヨは37.45%を直接出資に切り替え、筆頭株主となった。コクヨはぺんてるを持分法適用会社に組み入れた。両者は具体的な協業に関する話し合いをすることで合意した。「業務提携するかどうかは白紙の状態」(ぺんてる)というが、コクヨの持ち株は株主総会で重要事項に拒否権を発動できる33.4%を超えている。勝負はついた、と見ていいだろう。
コクヨは5月、ぺんてるの筆頭株主だった投資会社マーキュリアインベストメント(東証1部)が運営するファンドに101億円出資し、ぺんてるの事実上の筆頭株主となった。驚いたのは、当事者のぺんてる。コクヨからぺんてるに連絡が入ったのは、発表直前だったといわれている。資本提携では当事者同士で交渉を重ねて合意し、共同発表するのが普通だが、ぺんてるは蚊帳の外に置かれたまま自社株が買い取られた。ぺんてるは「間接出資の経緯が不透明で信頼関係が築けない」と反発、提携協議を拒んできた。
ぺんてる株式は譲渡制限が付いた未公開株だったため、間接投資になった。株式の譲渡には、ぺんてるの取締役会の承認を得る必要がある。だが、コクヨはぺんてるの株主になるわけではない。あくまでファンドに出資するだけ。譲渡制限には抵触しないし、事前にぺんてるに通知する必要はないというのがコクヨ側の理屈だった。ファンドはぺんてるの筆頭株主にとどまり、コクヨはファンドに出資するという奇策は、M&Aの王道から外れる。
御曹司、ぺんてる株を売却
騒動の発端は2012年5月。ぺんてる創業家の3代目・堀江圭馬氏の社長解任劇にまでさかのぼる。堀江氏は創業者の孫として米ロサンゼルスで生まれた。慶應義塾大学法学部政治学科在学中はカヌー部のインカレ優勝に貢献したスポーツマン。米ジョージ・ワシントン大学経営大学院でMBAを取得。02年、32歳の若さでぺんてるの社長に就任した。