しかし、実は密かに落とし穴がある。詰め替え用はボトル入りよりも内容量が少ない。それは多くの人が承知しているだろうが、理由を正確に知っている人は意外と多くない。
「ボトルに残っている場合に、注ぎ足してもあふれないようにしている」
詰め替え用の内容量が少ない理由を大手化学メーカーに問い合わせたところ、このような回答を得た。多くの消費者もそのように理解していることだろう。
だが、メーカーの本当の狙いはそうではない。
試しに、テレビCMなどで有名なシャンプーを例に挙げてみる。ボトル入りは480ミリリットルで税込492円、詰め替え用は340ミリリットルで360円。100ミリリットル当たりに換算すると、ボトル入りが102.5円、詰め替え用が105.8円で、詰め替え用のほうがわずかに高い。これは特殊な例ではなく、ほかの製品で比べてみても、大半は詰め替え用のほうが割高だった。
また、無添加を掲げ母親層から高い人気を得ているシャンプーは、ボトル入りが350ミリリットルで483円、詰め替え用は300ミリリットルで580円と、量が少ないにもかかわらず価格が高いケースもあった。
なぜボトル入りのほうが安いのだろうか。釈然としない人も多いのではないか。
主にシャンプーなどを製造している大手化学メーカーの製品開発部の社員は、「詰め替え用が割高というよりは、ボトル入り製品の価格を低く設定している」と話す。
「当社の製品を継続して買ってもらうためには、前提としてボトル入りのシャンプーを購入してもらわなければなりません。そのため、ボトル入りは価格を低く設定しているのです。詰め替え用の内容量が少ないのは、注ぎ足したときにあふれないようにするという意味もありますが、詰め替え用の割高感を感じさせないようにする狙いもあります」
雑誌などの定期購読者を獲得するために、創刊号を極めて安価で売り出すのと手法は同じだ。その後、消費者が買い続けてくれれば最初の安売り分は十分に元が取れるというのがメーカー側の狙いだ。
ドラッグストアなどで、シャンプーやボディソープを安売りしている光景をよく見かけるが、それも今後の継続購入を期待した販売戦略だ。
すべての商品がそうではないため、一概に詰め替え用を買うと損するとはいえないが、傾向として、1本1000円以下の安めの製品では詰め替え用が割高になっているケースが多い。今まで特に価格計算することなく詰め替え用を購入していた人は、普段購入している商品を一度調べてみるといいだろう。
(文=沼田利明/マーケティングコンサルタント)