4坪の店内はかなり狭く、女性店員に促されるまま、カウンター下の荷物フックにバッグをかけて顔を上げると、間髪入れずに「ドリンクは何にされますか?」と聞かれた。「え? じゃあ……烏龍茶で」と告げると、立て続けに肉の注文を聞いてくる。
正直、まだ何も決めていなかったが、カウンターの中に掲げられた木札のお品書きを一瞥し、金額の安いほうからマルチョウ1(2切れ)、豚肩ロース1、バラ山1を注文した。
食べながら追加で注文するつもりだったが、「お肉も一度に頼まれたほうが……」と促され、仕方なくイチボ、シンシン、ザブトンを続けて注文する。回転率を上げるためだと思われるが、正直、慌ただしさは否めない。
少なからず存在する「おひとりさま」
気を取り直して客を観察すると、筆者の左隣が女性3人組で、右はサラリーマン風の2人組だ。店の構造上、すべての客を確認することはできないが、並んでいる時に女性が1人で出てきたので、やはり男女ともに少なからず「おひとりさま」はいるようだ。
一方、店内の狭さとは対照的に、店員がカウンターの外に1人、カウンターの中に4人もいる。「いくらなんでも、店員が多すぎではないか」という気もするが、それぞれの店員は自分の前の客に肉の説明をしている。カウンター内を自由に動き回ることができない、狭小店舗なりのオペレーションなのだろう。
筆者に対しても、目の前の店員からタレの説明があり、さらに「メニュー表の100円から左(100円以上)のメニューは、すべて塩が振ってあるので、そのまま食べていただけます」との説明があった。
そうこうするうち、まずはマルチョウが出てきた。個々に割り振られたロースターにマルチョウ2切れを乗せ、焼き上がりを待つ。頃合いを見て薄味のタレをつけ、口に持っていこうとした瞬間、「できれば、そのまま食べたほうがいいですよ」とカウンターの外の店員に声をかけられた。内心、「食べ方くらい好きにさせてよ。普通、マルチョウはタレでしょ?」と思いながら、タレなしとタレありを食べ比べてみると、確かにタレなしのほうがはるかにおいしかった。
それから豚肩ロース、バラ山と続き、イチボ、シンシン、ザブトンには小皿の柚子胡椒がついてきた。これらはそれぞれA4、A5ランクの肉だけあって、さすがにおいしい。タレなどつけなくても、肉のほのかな甘みや肉そのもののジューシーな旨みが口中にジュワッと広がる。