また総合大学に比べて学生数が少ない理工系大学も大阪工業(42位)、東京電機(54位)、工学院(68位)など好位にある。理工系は就職に有利というばかりでなく、入社後の昇進にも優位であることは窺える。いずれにせよ、経済の根幹を担う民間企業においては、出身大学の難易度が絶対視されるとはいえないのだろう。
役員の占有率
上場企業役員の出身大学ランキングに関係して、興味深いデータをもうひとつあげてみよう。10年前(05年)と比較して役員の占有率(大学出身の役員数÷全上場企業の役員数)を伸ばした大学のランキングである。トップは上智、次いで広島、専修がベスト3になった。この10年で出身大学を非開示にした企業、役員が増えている影響もあり、調査対象にしたほとんどの大学が役員数、占有率ともに減らしている。
一方で役員数を増やし、占有率を伸ばすか、維持しているのはわずか9校であるから評価に値する。顔ぶれを見ると実力校でありながら、ライバル校と比較して、どちらかといえば地味なイメージの大学が多いようだ。ちなみにこの期間、日本経済はリーマンショック、欧州経済危機、東日本大震災および東京電力福島原発事故と数々の危機に見舞われている。力量は十分にあるが、控え目という各校の校風が、逆境においても登用される人材の輩出につながっているのかもしれない。
【この10年で上場企業役員占有率を伸ばした大学】
※カッコ内:(15年役員数:対05年比増加人数・15年役員占有率:対10年比増加率)
(1)上智(201人:35人・0.49%:0.05%)
(2)広島(131人:24人・0.32%:0.02%)
(3)専修(167人:28人・0.41%:0.02%)
(4)成城(71人:12人・0.42%:0.01%)
(5)東海(179人:25人・0.44%:0.01%)
(6)長崎(67人:8人・0.16%:変わらず)
(7)名城(93人:9人・0.23%:変わらず)
(8)國學院(57人:6人・0.14%:変わらず)
(9)駒澤(87人:10人・0.21%:変わらず)
『役員四季報2016年版』及び『同2006年版』(共に東洋経済新報社)のデータに基づき筆者が作成。調査対象は05年時点で上場企業役員数50人以上の83大学。
(文=島野清志/評論家)