2020年の年明け1月3日にリニューアルされた東京メトロ(東京地下鉄株式会社)銀座線渋谷駅。M字型のアーチ状の屋根に、柱のない広々としたホーム、白を基調とした内装など凝ったつくりの駅舎は「おしゃれ」と上々の評判だ。だが、通勤で利用する人々から使い勝手の悪さに関して不満の声が上がっている。なかでも特に指摘されているのが、乗換時の動線の悪さだ。
東京メトロが昨年10月28日に発表したプレスリリースによると、同駅移設工事は渋谷駅街区基盤整備に合わせて09年から開始。昨年12月27日から今年1月3日にかけて線路切替工事とホーム移設工事を実施した。新駅舎は、旧駅舎に比べてホーム幅が約6mから約12mに拡幅され、多機能トイレやエレベーターなどのバリアフリー設備の設置に注力されているという。
「乗換動線が最悪」
東京メトロの山村明義社長は開業日、「渋谷の駅全体のわかりにくさ、移動のしにくさの改善につながると考えております」とコメントした。だが、実際の通勤客からは厳しい意見が多数見られる。Twitter上では、京王井の頭線との乗換をする利用客を中心に次のような不満の声が上がっている。
「銀座線渋谷駅の混雑は当分改善しないのかな!?京王線からの乗り換え導線が最悪って周りで言ってる。たしかにこの時間でも階段が激混みだった」(原文ママ、以下同)
「混雑本格化で、いよいよ危ない。かなり押されるし、杖ついた方が良いかなあ…」
「井の頭線→銀座線の乗換導線は、しばらくこのまま?それとも今後変わるの?旧ホームが導線になったりする?それによって定期区間を変えるか悩む。通勤時間が+5分になり、ストレス」
「銀座線渋谷駅の乗り換えが糞。ラッシュ時の動線が悪すぎる…」
いったいどういうことなのか。実際に渋谷駅で乗換を行うための動線を確認してみた。
複数路線の利用客が行き交う乗換通路
東急百貨店西館から明治通りの上空・渋谷駅東口駅前広場にホームが約130m移動したことがその最大の要因のようだ。これまでJRや京王井の頭線などから銀座線に乗り換える場合、利用客はホームに向かうまで、交わることのない動線で移動していた。
しかし、今回のホーム移設で半蔵門線・東急田園都市線・ JR線・京王井の頭線から乗り換えるには渋谷スクランブルスクエア方面改札を目指して、JR線共用の乗換通路を使うルートがメーンになってしまったのだ。この結果、JR山手線の中央改札前で複数路線の利用客が行き交うようになり、混雑に拍車がかかっている。
別ルートとして東急百貨店西館のエスカレーターや階段を使って、旧駅舎の降車ホームを経由するルートもあるが、朝の通勤ラッシュ時には身動きが取れないほどの混雑ぶりだ。
実際に歩いてみたところ、これまで井の頭線ホームから銀座線ホームまでの移動時間は歩いて3分ほどだった。移設後は、東急百貨店西館ルートを使った場合が6分、渋谷スクランブルスクエア方面を経由すると10分以上かかった。
渋谷駅再開発終了まで解決しない可能性
新駅舎の場所がわからず迷う利用客も多い。今後、こうした動線が改善される予定はあるのか。また現在、通路として利用されている旧ホームをどうするのか。東京メトロ広報部に聞いたところ次のような回答を得た。
「旧ホームの解体に関して、構造上東急百貨店の解体工事に合わせて行うことになります。そのため、当面は現状のまま乗換通路として利用する予定です。乗換をされるお客様の混雑解消対策に関しては今月中旬ごろまで、平日ラッシュ時に警備員、案内係の職員ら計30人を配置してご案内する予定です。30人態勢は今月中旬までですが、警備員は当面の間、配置し継続的にご案内します」
つまり根本的な解決のためには、東急百貨店の解体を含めた渋谷駅前の再開発の完了を待たなければいけないということだ。それまで乗換の動線も変わり続ける可能性がある。どうやら慣れるまでは、個々人で最適なルートを探し続けることになりそうだ。