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国内でも失敗
サイオンブランド設立時のバイス・プレジデントで、現在は北米トヨタCEO(最高経営責任者)を務めるジム・レンツ氏は、「今回の決定は後退ではなく、トヨタブランドの飛躍を意味する。トヨタブランドでは困難だった新しいアイデアを、サイオンを通じて次々と試みることができた」とその成果を強調する。
しかし、サイオンブランドが若者の需要を開拓するという当初の目標を達成できなかったのは明らかだ。特に米国市場では、ここ最近のガソリン価格の下落の影響もあって大型SUVやピックアップトラックの需要が拡大しており、これらのモデルは若年層からも支持されている。ガソリン価格が再び大幅に上昇することが見込めないのに加え、「若い顧客がクルマの見た目や運転の楽しさを重視する一方で、以前より実用性を重んじる傾向にある」(トヨタ)としてサイオンブランドからの撤退を決定した。
トヨタは、日本でも若年層向けの戦略ですでに失敗している。1999年の異業種による合同プロジェクト「WiLL」だ。若年層の需要を掘り起こすことを目的に、トヨタやパナソニック、アサヒビール、花王など異業種企業が協調し、それぞれ自社製品にWiLLブランドを冠して展開してきた。
しかし、WiLLは浸透せず、トヨタ以外は相次いで撤退。トヨタは最後まで継続してきたが、需要は低迷して05年にはすべてのモデルの販売を打ち切っている。
世界販売台数が1000万台を超えて4年連続で世界トップの自動車メーカーとなったトヨタ。しかし、若年層を開拓しなければ「ユーザーが高齢化して、いずれは顧客が離れていく」との危機感は強い。もっとも苦手とする若い世代をどう惹き付けていくのか、トヨタの悩みは深い。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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