「お坊さん便」の料金は、戒名なしで3万5000円、戒名授与で6万5000円となっている。もちろん、この金額には派遣会社へのマージンやアマゾンの手数料なども含まれているが、本来「喜んで捨てる」はずのお金が企業の収益になるという仕組みには、確かに違和感を覚える。
しかし、一方では、金額が不明瞭なことから「読経や戒名などに支払われるお布施が、僧侶の利権になっているのではないか」という見方があるのも事実だ。お坊さんが乗る自動車を見ても、メルセデス・ベンツやアウディといった高級輸入車が多い印象がある。実際のところ、「坊主丸儲け」の噂は、どこまで本当なのだろうか。
僧侶の約40%は、年収300万円以下?
「確かに、参拝客が毎年何万人と来るような大きな寺の場合、かなりの収入があるでしょう。それこそ、正月の三が日だけで1年間ご飯を食べていけるくらいの利益を上げると聞きます。ただ、それはほんのひと握りで、普通の寺はそうはいきません。僧侶の中には、学校の講師などの副業をしている人も非常に多いです」(同)
浄土宗の僧侶・鵜飼秀徳氏の著書『寺院消滅』(日経BP社)によると、浄土真宗では年収300万円以下の僧侶が全体の40%強で、経営が厳しい寺も多く存在するという。
「お坊さんがベンツを乗り回しているという話も聞きますが、日本の僧侶は30万人以上いるので、クルマ好きの人も当然いるでしょう。なかには、檀家さんから譲り受けるケースもあると思います。『お世話になっているお坊さんに、みすぼらしい格好はさせられない』という心遣いもありますから」(同)
「坊主丸儲け」は、あくまで噂にすぎないというわけか。N氏は、アマゾンの「お坊さん便」について、「前述の2つの問題点さえクリアできれば、ネットを利用したお坊さんの派遣も悪くはないのでは」と語る。
「本当は、各宗派の総本山がそういったシステムをつくるのがいいと思いますが、まずやらないでしょう。寺には、『ご縁によって続けることができている』という考え方が強くあります。良くも悪くも、“面倒くささ”にありがたみを感じる人も多くいるわけです」(同)
とはいえ、ネットが発達した今、システムとして便利な「お坊さん便」の需要が伸びる可能性はおおいにある。その時のために、各宗派は今から対策を練っておくべきかもしれない。
(文=中村未来/清談社)