下位メーカーによる提携加速
国内飲料メーカーは飽和状態にある。そのうえ、コンビニからは毎年多数の新商品を売り出すことを求められ、スーパーに売ってもらうために販売促進費を支払っているのが現状だ。利益を上げるのが難しくなっているなかで、定価で売れる自販機は、今まで以上に利益を確保する上で重要な販路となってきた。
しかし、都心部などでは設置場所は限られており、設置台数は頭打ちの状態だ。しかも、自販機市場は長年、日本コカ・コーラグループがトップを独走してきた。下位メーカーによる自販機の提携が始まるのは必然だった。
08年、アサヒ飲料とカルピスが自販機事業を統合した。商品の相互供給もキリンとヤクルト本社、伊藤園とサッポロホールディングスがそれぞれ実施した。
11年には、伊藤園と大塚ホールディングス(HD)が、商品の相互供給を始めた。伊藤園は15万台、大塚HDは10万台の自販機を抱えている。対象商品は伊藤園が緑茶飲料で4割のシェアを握る「お~いお茶」、大塚HDは傘下の大塚製薬のロングセラー商品の「オロナミンCドリンク」である。
伊藤園は緑茶飲料の最大手だが、炭酸飲料には有力商品がない。一方、大塚HDも緑茶飲料が手薄だった。それぞれの有力商品を取り込んで補完し自販機の販売力を高めた。
アサヒと大塚製薬は15年3月、自販機での清涼飲料の販売で業務提携した。アサヒの缶コーヒー「ワンダ」と大塚製薬のスポーツドリンク「ポカリスエット」を供給し合い、お互いの自販機で販売した。
自販機の設置台数はアサヒが28万台。アサヒは手薄なスポーツドリンクの分野を補強し、大塚製薬は缶コーヒーを販売することで、自販機の商品力を高めた。
独立系のダイドーと伊藤園が再編の目玉になる
業界2位のサントリーグループが自販機業界地図を塗り替える勢いを見せている。15年7月、サントリー食品インターナショナルが日本たばこ産業(JT)の自販機事業を買収し、自販機の設置台数を63万台に増やした。首位の日本コカ・コーラは83万5000台。2強体制が出来上がった。
3位以下との差が広がるなかで、キリンはダイドー、アサヒは大塚製薬との提携で巻き返しを図る。
今後、知名度の高い商品の相互供給と、自販機事業の提携が加速するのは間違いない。08年のアサヒとカルピスの自販機事業の統合は、12年の持ち株会社アサヒグループHDによるカルピスの買収に直結した。自販機事業の連携が飲料業界の再編の起爆剤になるかもしれない。
独立系の伊藤園とダイドーが台風の目となる。
(文=編集部)