「これは、民法でいう『錯誤』(民法95条)の問題です。例えば、高級レストランで『水をください』と頼み、ミネラルウォーターが運ばれてきて高額料金を取られるケースに似ています。客側は『水はタダ』という認識で水を注文したのに対して、店側は『水は商品』なので有料であると考えて水を提供しているので、加算料金が発生するかどうかについて、相手に対する意思表示と内心が一致していないという錯誤があると考えられます。ご飯のおかわりに加算料金が取られるかどうかも、同じ問題です」(弁護士)
ここでいう錯誤とは、「表意者が無意識的に、内心の意思とは異なる意思表示をすること」。「焼酎濃いめで頼むと◯◯円加算」ということを客側が理解した上で注文していないと、錯誤となり、注文が無効になるということだ。ただ、民法95条によれば、注文者側に「重大な過失」があると錯誤ということはできなくなるため、「焼酎濃いめ」の加算料金がメニューなどに明示されていたような場合には、無効とはならないだろう。
さらに、店側が、意図的に「焼酎濃いめ」の料金をメニューなどに明示せず、客にも事前に告げずに会計時に加算するような場合には、店側の詐欺(民法96条)となる場合もありうる。もし、そういったトラブルに遭ったら、レシートやメニューなどの証拠を残し、納得のいかない料金は「払わない」ことが重要だという。
「払ってしまった後に気づき、レシートなどを提示して抗議することもできますが、現実的には一度支払った金額を取り戻すのは大変なので、なるべく支払う前に、その場でレシートを確認して抗議するのが望ましいでしょう」(同)
問題は、店側も正当性を主張し、「払え」「払わない」というトラブルになってしまった場合だ。
「こうした案件の場合、警察はかなり悪質な場合でない限りは民事不介入のため、基本的には取り合ってくれません。公安委員会が指定する地域で営業しているキャバレークラブや風俗店などであれば『ぼったくり防止条例』があるため、ある程度は対応してくれることもありますが、一般的な居酒屋チェーンでは難しいでしょう。
弁護士に相談することで解決に向かうとは思いますが、数百円の差額を取り返すために費用を支払って相談するのは、現実的ではないかもしれません」(同)
酔いが回ると、ついつい「焼酎濃いめ」と頼んでしまうが、店によって対応が異なる以上、しっかりとメニューを確認してから注文したほうがよさそうだ。
(文=ソマリキヨシロウ/清談社)