「展望見えない」(津賀社長)パナソニック、多様性排したソニーの“劣化”
井上 最近のシャープは、「小回りが利く、身の丈経営に戻す」という言い方をよくしています。例えば、コンビニに置いてある複合型のコピー機。コピーするだけではなくて、携帯電話やデジカメから写真をプリントできるようになっています。シャープのコンビニ向けシェアはトップで、数少ない黒字部門です。そういう事業をもっと強化していけば、道が開けてくる可能性はあります。東南アジアでの白物家電も意外と好調です。また、タブレット「AQUOS PAD」もかなり評価が高いようですね。シャープは世の中の人に評価されるヒット商品を作るDNAは、もともと持っている会社なのです。
●多様性を排除したソニー
ーー前期に4000億円以上の赤字を出したソニーはいかがですか? 今期は5年ぶりに黒字に転換する見通しですが、このまま業績は回復していけるのでしょうか?
井上 ものづくりで回復するというのは、かなり厳しいと思います。金融事業で利益を上げていますが、デジタル家電の分野は厳しいですよね。
ーーウォークマンをはじめ、魅力的で洗練された商品をたくさん生み出してきたというイメージが強いソニーですが、気がつくと相当業績が落ち込んでしまいました。その原因は、どこにあるとお考えですか?
井上 多様性を排除したからだと思います。創業者の盛田昭夫元会長は、『MADE IN JAPAN わが体験的国際戦略』(PHP研究所から出た新版)の中で、次のようなことを指摘しています。
最近のソニーは、コンセンサスや協調性を強調するようになっている。しかし、それは独特の考えを持っている人たちを排除することにつながる。協調性を強調し、異質な人材を使いこなせない人は、管理職として失格。
26年前に書いた本書の中で、今のソニーの課題をすでに掲げている点に驚きます。時代が違うとはいえ、本などでソニーが創業した頃について読むと、みんな楽しそうにやっていますよね。もともと明るい会社だった。それが、出井伸之社長時代に、EVAという経営管理指標を導入するなどして、「遊び」のない会社になってしまいました。暗い会社になって、楽しくやるという雰囲気がなくなってきたのではないでしょうか。
(構成=編集部)