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また、「隣に座らせて」という要望は、3人とも経験済みだった。いつ手が伸びてくるかわからないため、「規則で、後ろにお乗りいただくことになっていますので……」とやんわり断るしかないが、3人乗車で後ろの2人を先に降ろした時などは、そのまま走るしかない。この場合も、ドライブレコーダーが“抑止力”になるようだ。
3人のうち2人が味わっていたのが、「お釣りを渡す際、乗客のズボンのファスナーから“大事なもの”が露出していた」という経験だ。
「いきなりのことで固まりました。何かされたら嫌なので、すぐに視線を外しました」(同)
「先輩に話したら、『そんなたいしたことないもの、早くしまいなさい! と言ってあげればよかったのに』と言われましたが、そんな余裕はありませんでした」(Bさん)
「ベルトを外す音がして、渡されたお札がヌルッとしていて…」
最後に、Aさんが味わった「強烈な体験」を紹介しよう。
「土曜の夜、駅で乗車待ちをしていると、乗り場から少し離れた場所で、私を見ている30歳ぐらいの男性がいたんです。その人、私が乗り場のハナ番(先頭)になるのに合わせて乗ってきて。発車してすぐにズボンのベルトを外す金具の音と、ビニールを動かす音がしたんです。5分ぐらいの近距離でしたが、支払いの時、渡されたお札がヌルッとしていて……。
降ろした後、そんなお札を受け取る自分が情けなくなってしまいました。今でも、あの音が耳にこびりついています。あれから、仕事の時は薄いメイクにしています」。
とはいえ、最近はドライブレコーダーの存在が、こうした客の存在を減らしている。さらに、何かあった場合は行燈のSOSランプをオンにして「録画しているので、このまま警察に届けます」とする手もあるが、「静かな場所で降ろした場合は、何をされるかわからない恐怖がある」(Cさん)というのも当然だろう。
「話がエロ方面に傾いたら、うまく別の会話に誘導して、その気にさせないようにするしかありません」(同)という通り、相手をコントロールする会話術もまた、女性運転手に求められる条件なのかもしれない。
(文=小川隆行/ライター兼タクシードライバー)
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