では、FAAの運航停止命令は、いつ頃解除される見通しなのか?
「ボーイング社も、最初はこれほどの問題にならないと高をくくっていたようで、強気の発言をしていましたが、運航停止という命令が出された途端、調査に全面的に協力するという方針に切り替えたようです。今さらですが、航空会社が自主的に運航停止を決めたときに、ボーイングが、『今回のトラブルの原因はこれで、こういう対応をすれば大丈夫だ』と言い切れば、これほど大きな騒ぎにはならなかったかもしれません。FAAが運航停止命令を出した以上、きちんと原因の解明とそれに対応する措置をとらない限り、解除にはならないでしょうね」(航空業界関係者・B氏)
別の業界関係者・C氏も、最悪の場合、運航再開まで1年以上かかる可能性もあるという。
「飛行機の事故調査は、旅客機の使い方が悪かったのではないか? つまり航空会社に過失があったのではないか? あるいは、組み立て工程に不具合があったのではないか? 部品に欠陥があるのではないか? という観点で調査するのが一般的です。今回のケースでは、バッテリーだけの問題なのか、あるいは電源システムの問題なのかによって、問題解決に要する時間が違います。電源システム全体の見直しが必要ということになれば、1年程度かかることも覚悟したほうがいい」(航空業界関係者・C氏)
それにしても高い技術水準を誇る787で、これほどトラブルが起こることは予想されていたのだろうか?
ある航空技術者は、「新造機というのは初期トラブルが多いもの。特に今回の787はまったく新しい構造の旅客機なので、ある程度トラブルが起きることは想定されていました」という。
前出のA氏の次のように話す。
「旅客機を買うときには、就航して1年以上たってからにすべきです。例えば、今では世界のベストセラー機になっているボーイング社の777は、米ユナイテッド航空がローンチカスタマーで、本当に初期トラブルの多い飛行機でした。ANAも、ある程度はそういったリスクを覚悟していたのでしょうが、まさか運航停止にまでなるとは思っていなかったでしょう」
●ANAは大量欠航へ
この787は、現在、世界に約50機出荷されているが、その約半分を日本勢が占める(ANAが17機、JALが7機を保有)。よって、今回の運航停止で、ANA、JALそれぞれに影響が出ている。
ANAは事故当日の1月16日以降、787を使用する全便が運休。国内線と国際線合わせて2月は計379便に及ぶ欠航予定だと発表している。JALは787をボストンやサンディゴなどの国際線のみに就航させていたため、日替わりで1日1往復程度の欠航となっている。
運航停止が長期化すれば、影響は拡大することになるだろう。各航空会社は世界規模で機体、パイロット、整備士の再配置を行うことが必要になるためだ。前出のC氏は、次のように大変さを話す。
「パイロットや整備士は機種ごとにライセンスが必要なため、人の工面とかも大変ですよ。今のところは対応できていますが、運航停止が長引けば長引くほど影響が大きくなってくるでしょうね」
●ローンチカスタマー・ANAの誤算
前述した通り、新しい機種は初期トラブルを起こすリスクが高い。では、なぜANAは787のローンチカスタマーとなったのだろうか?