三菱東京UFJ銀行が次に仕掛けたのが、子会社の第二地銀、中京銀行の十六銀行との合併。すんなり進むと思われていたが、ここへ来て暗礁に乗り上げた。のみ込まれることになる中京銀行の頭取に15年4月、生え抜きとして初めて室成夫氏が就いたことから中京銀行側からの本音が表に出てきた。
吸収される側の感情もからみ、経済合理性一点張りでは合併はうまくいかないようだ。
ゆうちょ銀行が地銀を買収する日
地銀再編の“台風の目”となるのが、ゆうちょ銀行である。日銀のマイナス金利導入で、最も打撃を受ける銀行だからだ。
ゆうちょ銀行は、ほかの銀行とは異なり融資業務ができない。そのため国債の運用比率が高い。現在は割合を減らしているが、15年12月時点で運用資産205兆円のうち41%を国債で運用している。マイナス金利の導入後は長期金利の指標となる10年物国債の利回りが一時、マイナスになった。国債の利回り低下は、即ゆうちょ銀行の収益悪化につながる。
ゆうちょ銀行は国債中心の運用を見直すため、外国債券や国内株式の売買で収益の確保を目指す。いわば国内最大の機関投資家になるわけだ。
ゆうちょ銀行はスルガ銀行と住宅ローンの取り扱いで提携しているが、大半はATMの相互利用にとどまっている。今後、提携強化の動きが強まるのは確実で、その先に地銀への出資が待っている。
ゆうちょマネーを呼び込みたい第二地銀が続出すれば、ゆうちょ銀行が地銀再編の主導権を握る局面があるかもしれない。
まだ先とみられていたが、マイナス金利導入でゆうちょ銀行の地銀買収の時期は早まることになる。
薩長土肥で金融連合
鹿児島、山口、高知、佐賀に本店を置く3つの第二地銀と2つの信用金庫が「薩長土肥包括連携協定」を締結した。第二地銀と信金が県境を越えて連携する。
南日本銀行、高知銀行、佐賀共栄銀行の3つの第二地銀と東山口信用金庫、幡多信用金庫は、共同で金融商品を開発したり人材の交流を進めるという。
4つの県は「平成の薩長土肥連合」を発足させ、観光面では協力してきた。各金融機関のトップが福岡市で記者会見したところがミソだ。ふくおかFGの勢力拡大に危機感を抱いていることの表れなのだろう。
経営規模で下位地銀や第二地銀を上回るビッグな信用金庫からも目を離せない。
埼玉縣信用金庫、城南信用金庫、岐阜信用金庫)、岡崎信用金庫、京都信用金庫など、地銀・第二地銀の流動化が進んでいる地域にある有力信用金庫の動きにも関心が集まる。
有力信金が弱小第二地銀をのみ込んで銀行に業態を変更することを金融当局が認めるかどうかにも多くの目が向けられている。
(文=編集部)