グリコ、なぜ冬のアイス販売増?セブンカフェの2倍売る「店」?非常識が新顧客を創造
たとえば、江崎グリコは「パピコ」「アイスの実」「ジャイアントコーン」という主力製品で、新たに「大人シリーズ」を発売している。しかもチョコレート感を濃厚にすることによって「冬の暖かい室内」で食べてもらうことを狙っている。実際に、この商品群はそのターゲット通り、30~40代の女性によく売れているという。
アイスクリームから学ぶ新たな顧客を創造する考え方
新たな顧客を創造したと思われるアイスクリームの事例から、新たな顧客を創造するためのヒントは得られないだろうか。
ひとつ目は、「子供」に対して「大人」、「夏」に対して「冬」といったように、これまで考えることもなかった180度真逆なセグメントを考えてみていることだ。これはこのまま適用することもできるだろうし、「男性」に対して「女性」、「B to B」に対して「B to C」といった具合に簡単に応用できる。
ポイントは、一見非常識に思える発想だ。まだ誰も試みていないブルーオーシャン(参入企業が少なく、競争が激しくない市場)なだけに考えてみる価値がある。もちろん、すべてが成功するとは限らないので、そこは粘り強く模索していかなければならない。
2つ目は、こうして出したキーワードを2つ以上組み合わせてみることだ。「夏」の「子供」に対して「冬」の「大人」といった具合だ。なぜか。
それは製品やサービスのコンセプトが尖ってくるからだ。たとえば、清涼感が求められる夏と違って、冬は暖かい部屋でゆっくり食べる濃厚系が求められるといった具合に具体的なシーンが想像しやすくなり、製品の特徴やプロモーションを具現化することができる。
そして3つ目が、既存顧客(夏の子供)から創造すべき顧客(冬の大人)へ橋渡しをするものは何かを考えることである。つまり、新たな顧客セグメントはまったくの飛び地ではなく、両者になんらかの関係性があることが重要だ。アイスクリームのケースでいえば、子供時代によく食べたアイスクリームの思い出がその懸け橋となっている。
この手法には実は先輩がいる。そう、カルピスだ。かつてカルピスというのは、夏に母親が家庭で子供につくってくれる飲み物だった。筆者の子供時代には、入院しているときの贈り物という贅沢品であった。ところが、今はカルピスソーダといったように、大人たちが自販機で買う飲料を発売し、卒業した顧客を再びしっかりとつかまえているのである。そこにはしっかりとした技術開発の裏づけがある。