グリコ、なぜ冬のアイス販売増?セブンカフェの2倍売る「店」?非常識が新顧客を創造
ネスレの顧客創造-ネスカフェアンバサダーという発想-
ネスレが2012年から始めたネスカフェアンバサダーという仕組みが、新たな顧客創造に貢献している。家庭用インスタントコーヒー市場では7割のシェアを誇るネスレも、家庭外の市場ではわずか3%と吹けば飛ぶようなシェアしかとれていなかった。その家庭外の顧客を新たに創造するために始めたのが、このネスカフェアンバサダーという仕組みである。
アンバサダーは職場でネスレ商品をプロモーションし、実際にネスレ商品を定期的に購入し、そして代金の回収まで行っている。ネスレにとってアンバサダーはまさに営業マンのようなものだ。しかし、アンバサダーはネスレの社員でもなければネスレから報酬を得ているわけでもない。
果たして、そんな都合のよいことをしてくれる人がどれくらいいるだろうか。せいぜい数千人程度だろうかと思われるが、なんと23万人(16年2月現在)もいるというから“びっくりぽん”だ。少し古いデータだが、14年の1年間で、セブンカフェが7億杯売ったのに対し、アンバサダーは今年15億杯に達するというから驚きだ。
ネスレはいわずと知れたグローバル企業だ。ところが、ネスレ日本は海外に出ていくことはできない。海外には国ごとにネスレがあるからだ。だから国内で踏ん張るしかない。そうして踏ん張った結果出てきた発想のひとつが、ネスカフェアンバサダーである。ネスレ日本の高岡浩三社長は、これ以外にもイノベーションを起こすさまざまな仕組みを仕掛けている。安易に海外に逃げるのではなく、国内でもやりようによっては新たな顧客を創造できるのだということを、高岡社長は自らの実践を通して日本企業に教えてくれている。
(文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授)
参考文献
1.「夏の子供向けが冬の大人向けに グリコや森永乳業がアイス需要を開拓」財界、2016年3月22日号
2.「コーヒーマシン貸し出し 高齢者」日経産業新聞、2016年2月26日