スマホやタブレットの台頭でパソコン市場が縮小。HDD用モーターの年間出荷台数は15%減の4億2000万台前後にとどまる。
永守社長は1月24日の記者会見で「パソコン市場の縮小が、予想より2年早かった」と述べた。スピード経営を掲げる永守はスマホ時代の到来を予想して準備を進めてきたが、その普及速度が想定を上回った。スマホはソニー、パナソニックなどの家電メーカーや任天堂などのゲーム機メーカーに続き、世界最強の部品メーカーである日本電産にも大打撃を与えた。
永守は、スマホ時代を予想して、パソコン用モーターに代わる分野への事業構造の見直しを急いでいた。事業転換のカードにしたのが、永守が最も得意とするM&A(合併・買収)である。買収の照準は、海外に合わせた。
2010年8月、米電機大手エマソン・エレクトリックのモーター事業部門(EMS)を600億円で買収したのが皮切りだった。EMSは住宅用の大型空調などの大型モーターが主力で、家電用モーターでは米国でトップシェアを持つ。その後、12年には中大型モーターメーカーのM&Aが加速した。その頃日本電産は、1年間に海外メーカー6件を買収し、M&A件数は37件となった。
買収したのはイタリアの発電機など超大型モーター大手のアンサルド・システム・インダストリー、米国のエレベーターなど中大型モーターのキネテックと、クレーンなどの産業用モーターのアブトロン・インダストリアル・オートメーション。中大型モーター向けの米最大手大型プレス機器メーカー、ミンスター・マシンなどである。
日本電産は12年11月、1000億円の普通社債(SB)を発行した。SBを発行するのは初めて。積極的なM&Aで短期の借入金が増えたため、長期資金に置き換えることで財務を安定させるのが狙いだ。
パソコン向けHDD用の精密小型モーターを収益源にしてきたが、精密小型モーターを搭載しないスマホ時代に対応するため、白物家電用、産業用中大型モーターへと事業構造を転換させる布石を打ってきた。
日本電産の今期の大幅減益は、構造改革費用として400億円を織り込んだことが大きい。海外工場の再編を進め、HDD用モーターの生産能力を3月末までに3割削減し、月4000万台に引き下げる。永守社長は「事業再編で、来期の収益のV字回復を目指す」と自信をのぞかせる。