役員報酬の内訳は取締役8人に対して総額10億3700万円。田邊氏が実に9割を一人占めしたことになる。残り7人の取締役の平均報酬は1400万円。田邊氏はほかの取締役の64倍の役員報酬を得ている計算だ。7人の役員の処遇は一流企業のヒラ社員並みである。
田邊一族による私物化に異議を申し立てた個人投資家
田邊氏の非常識な役員報酬に株主が憤った。定時株主総会は16年2月26日午前10時、東京・港区芝公園の芝パークホテルで開かれた。
今回の総会では9つの議案があり、1号から5号までが会社側、6号から9号までが5名の株主による株主提案である。株主総会招集通知書によると、株主提案は次のような内容である。
【第6号議案 取締役の報酬額改定の件】
提案内容:取締役の報酬総額を年額5億円以内とする。
提案理由:代表取締役の田邊耕二氏の昨年の報酬は年額14億円であり、事業の規模や業績に比べて著しく均衡を欠いている。また、2014年11月期においては、高すぎる役員報酬が原因で最終赤字となっている。そこで、取締役の報酬を適正化して黒字化もしくは利益の倍増を図るべきである。
【第7号議案 取締役解任の件】
提案内容:取締役の田邊世都子を解任する。
提案理由:田邊世都子氏は代表取締役田邊耕二氏の娘であり田邊世都子氏を取締役としていることは、非常識な高額報酬と並び、田邊耕二氏による会社の私物化の象徴である。
【第8号議案 定款変更の件】
提案内容:報酬の返還を定款の条文に加える。
提案理由:田邊耕二氏の報酬は8億3400万円から14億500万円へと「急増」している。当社は赤字になっており利益等の事情が考慮されていない。(前年を上回る)6億円を返還すべきである。
【第9号議案 定款変更の件】
提案内容:有価証券報告書は、定時株主総会の前日までに提出するよう定款に加える。
提案理由:田邊耕二氏の非常識な報酬額14億500万円は有価証券報告書に記載されている。このような情報は株主総会において、株主に提示されるべきものである。
定時株主総会では、会社側が提出した議案がすべて可決され株主提案は否決された。株主提案がどの程度の賛成票を得たかが気になるところである。昨年は総会の翌日に開示された決議状況に関する臨時報告書は3月7日になって提出された。提出が遅いのは、公表したくない数字が含まれているからではないかと批判する声も多かった。