苦境ユニクロ、密かに進む壮大な計画…商品で2千種の組み合わせから自由に選択
ユニクロはセミオーダーで対応
ファストリは、需要予測のブレからくる在庫ロスを減らすため、また変転するファッショントレンドに対処するために、IoT(モノのインターネット)を駆使した新しいビジネスモデルを模索しているようだ。ビッグデータのコンサルティングを強化しているアクセンチュアと15年に合弁会社を立ち上げたのも、その一環だ。
ファストリ会長兼社長の柳井正氏は、これまでの同じ商品を大量生産する手法を見直し、20年までには客が好みの柄や素材を選んで自分だけの商品を注文できるようにするとして、「世界中の誰もが体験したことがないような買い物ができるようにしたい」とコメントしている。また、「現在約5%のeコマースの売り上げを将来的には30~50%に拡大する」とも発表している。
データに基づくパーソナライゼーションを採用して、セミオーダー感覚の洋服を提供するということだろう。このように要約してしまうと、それほど大したことでもないように思える。ある程度の方向性は決まっていても、具体的な内容は試行錯誤の過程を経て完成していくつもりなのだろう。
すでに、その試行錯誤のステップは始まっている。16年からはオンラインストアで自分の体型や好みにぴったり合ったものを選べるメンズジャケットの販売を始めている。サイズや色の組み合わせによって2112通り。しかも、最短7日で指定の場所に配送できるという。
ユニクロが思い描く洋服と洋服の提供の仕方が、消費者の心をとらえることができるかどうかは疑問が残る。しかし、いずれにしてもユニクロのeコマースのビジネスモデルは、ITプラットフォームで売り手と買い手とをつなぐ仲介業の楽天や、受託販売や仲介業を中心とするアマゾンとは異なったものになるはずだ。
(文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学客員教授)