現在、多くの企業が顧客サポートのオンライン化を推し進めているが、さまざまな問い合わせやクレーム対応など、「企業の窓口」としての役割は、いまだにコールセンター(以下、コルセン)が担っている。
『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』(朝日新聞出版/仲村和代)は、そんなコルセンのブラックな実態や新たな取り組みなど、「コルセン業界のリアル」を浮き彫りにしていると話題の本だ。
しかし、実際にコルセンで働いていた人たちからすると、同書には腑に落ちない点が多いという。そこで、オペレーター目線で、同書に対する「違和感」の正体を探った。
「1カ月で3割辞める」は言いすぎ?
『ルポ コールセンター』は、著者が取材した「沖縄のコルセン」の業務風景から始まり、そこで働く人々の声から、コルセンの過酷さを紹介している。
「仕事の厳しさに耐えられず、1カ月で3割が辞めていく」「体調不良を訴えて辞めていく人も少なくなかった」など、具体的な例を挙げているため、これだけを読めば、誰もが「コルセン業界はブラックだ」と思ってしまうに違いない。
しかし、実際に化粧品会社のコルセンで働いていたA氏によると、これはあくまでも「ひとつのケース」にすぎないという。
「私がいた職場は数十人が在籍していましたが、ピーク時の忙しさは、おそらく同書に出てくる沖縄のコルセンと同じだと思います。でも、1カ月で新人が3割も辞めたケースはほとんどありません。
また、離職の理由も『仕事がキツい』ではなく、研修内容から『顧客対応に向いていない』と判断されて、契約を打ち切られるケースが大半です。つまり、本人の『向き、不向き』の問題ですね。体調不良を理由に辞める人も、私がいた現場では聞いたことがありません」(A氏)
「向き、不向き」のほかに、「人間関係」で辞める人も多いという。これは、同書ではまったく触れられていないポイントだ。
「コルセンは女性が多いので、職場内で派閥があったりするし、陰口やいじめも日常茶飯事です。前日まであいさつをしてくれた人が、ある日突然、あいさつを返してくれなくなったりすることもザラです」(同)
A氏によると、ある新人の場合、はたから見ている分には問題なかったが、ささいな理由から研修担当者の機嫌を損ねてしまい、それ以降はろくに仕事を教えてもらえなくなってしまったという。そして、上長に「あの子は言うことを聞かない」「仕事を覚える気がない」などと吹聴され、一方的に契約を打ち切られてしまったというのだ。