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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

「反社会的勢力」三菱自、隠蔽と犯罪を重ね死者続出…消費者の安全より組織的利益優先

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

 しかし、それに続いて「従業員は一生懸命やっていますから。会社のためと思ったのが裏目に出たわけですよ」(同)と見解を述べているのは看過しがたい。B to Cの製造業会社が、消費者の安全より会社のため、あるいは組織適応を優先して起こしてきたのが一連の三菱自の不正事件ではなかったか。「買うほうもね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買ってるんじゃないわけ」(同)と相川氏は放言しているが、「だからいいんだ」という価値観の袋小路の行き先が、2度にわたる死亡事故だったのではないか。

大企業を崖っぷちに追いやる、いびつなムラ社会論理

 実は相川氏は、三菱自の相川哲郎現社長の実父である。つまり、2人は三菱グループというムラ社会どころか家族なので、応援発言に熱が入ってしまうのも理解できなくはない。しかし、グループの実力者のこの発言は「贔屓の引き倒し」のような向きを否めない。

 昨年から今年にかけて、消費者や社会を裏切るような意図的なビジネス事件を思い浮かべてみる。

・独フォルクスワーゲンのディーゼル偽装
・東洋ゴムの免震装置ゴム不正問題
・東芝の利益操作 
・三菱自の燃費データ偽装

 いずれも大企業、つまり大組織である。それぞれの事象を引き起こした経営者あるいは担当者は、社外つまり社会や消費者の損益よりも、自分が属する組織内での損得や価値観、行動規範を優先させ、その結果として反社会的な企業内行動を取ってしまったという構造で理解できる。相川哲郎社長の謝罪会見を見ていて違和感を覚えたのは、軽の供給先の日産のことを「日産様」と「様」付けで何度も丁寧に格上呼称していたことだ。「この会社は対消費者目線がないんだな」と感じた。今回の問題で一番被害を受けているのはユーザーであり、社会である。それが直接の取引先のことしかとりあえず念頭にないのだ。社会的視点が欠落している大企業が反社会的なことをしでかしてしまっている。

 反社会的な存在ということは、暴力団と同じだというとわかりやすい。そして、暴力団は駆逐されるべきだ。相川賢太郎氏は「会社(三菱自動車)が潰れたら3万人の従業員が路頭に迷うことになるんですから、そんなに簡単に潰せるもんじゃないんです」(同)ともコメントしているが、暴力団を廃業させる場合でも組員の就業対策が必要となる。同じことではないか。

「彼らを咎めちゃいけない。三菱自動車のことを一生懸命考えて、過ちを犯したんだから。(略)武士の情け、そういう気持ちも大事ですよ」(同)とも語っているが、そのために2度も死亡事故を起こし、今回も社会的影響は計り知れない。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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