平均寿命まで生きても損?
では、日生が宣伝するように、どこまで長生きをすれば儲かるのであろうか。
14年時点で男性の平均寿命は80.5歳、女性は86.8歳となっており、平均寿命まで生きた場合でも、年金の受取総額は男性660万円、女性1020万円となり、保険料の支払い総額に対して男性の場合には490万円、女性の場合には388万円の損失が出ることになる。平均寿命まで生きても“損失”が出るのだ。平均寿命ということは、単純に考えれば半数は亡くなっているということだから、契約者の50%は儲けに与れないことになる。
男性の場合、保険料の支払い総額を年金の受取総額が上回り、儲けが出始めるのは89歳(受取総額1200万円)、女性は93歳(1440万円)という高齢になってからとなる。日生の説明書では、99歳まで生きて年金を受け取り続ければその総額は1800万円になり、男性は650万円の利益、女性は392万円の利益が出ることになると高らかにPRしている。
しかし、支払った保険料を取り戻すためには男性は平均寿命より9年、女性は7年も長生きしなければならないのだ。ここまでくると、保険というよりはサバイバル・ゲームのようなものだろう。よほど長寿の家系で健康に自信がなければ、この自らの寿命を賭けたギャンブルのような保険に加入しようとはならないのではないか。
「5年保証期間付」の意味
さらに、この保険がギャンブル的要素を強めているのが、死亡保険金と解約返戻金だ。まず5年保証期間付終身年金の「5年保証期間付」の部分だが、これは5年間分の年金の支払いは保証するという意味。モデルケースでは年間60万円の年金額なので、60万円×5年間=300万円が保証される。それ以降の年金受取期間(70歳以降)に亡くなった場合には、死亡保険金などの支払いは一切行われない。つまり、保証期間の300万円を5年間で受け取り、6年目の年金を受け取ることなく亡くなった場合には、男性は
・1150万円(保険料の総支払額)-300万円(受け取った年金額)=850万円の損失
となり、女性の場合には1108万円の損失となる。
もし、5年保証期間に死亡した場合には、保証期間の残存期間、つまり年金を受け取っていない期間の年金の現価に相当する金額を支払うとしている。この年金の現価は、生命保険が開示をしていない部分なので明確な基準はわからないが、相当額が減額される可能性が高い。