成功する人と、そうでない人との違いはどこにあるのだろうか。
ビジネスに真剣な人ほど、「成功する人の考え方」に興味を持つだろう。あやしい自己啓発のノウハウが氾濫する昨今において、今なお不動の成功法則として支持されている考え方がある。それが故松下幸之助氏の教えである。
松下氏は、説明するまでもなく松下電器産業(現パナソニック)の創業者であり、現在でも多くの経営者から「経営の神様」と尊敬されている。その松下氏が伝えてきた成功法則とはどういうものだったのだろうか。松下氏から直接薫陶を受け、その教えから「陽転思考」を見いだした人物がいる。小田全宏(おだぜんこう)氏である。
小田氏は東京大学法学部卒業後、松下氏が設立した松下政経塾に入塾。松下氏から直接指導を受けながら一貫して人間教育を研究してきた。現在は全国の企業で陽転思考を中心とした講演と人材教育実践活動を行っている。また、ビジネスパーソンと経営者のEラーニングスクール「ウィズダムスクール」において、自身の活動の集大成となる講座『陽転思考の人間学講座(全48講座)』を開講している。
今回、小田氏から許可を得て、この講座で紹介されている松下氏の教えを紹介する。
松下氏は84歳の時に、次世代の国家指導者を育成するための公益財団法人として「松下政経塾」を設立する。小田氏は4期生として入塾した。入塾の面接にて初めて松下氏と対面した小田氏は、松下氏の印象をこう語る。
「松下氏は小柄な方でしたが、優しさと圧倒的な存在感がありました。とてもこの人には嘘をつけない、そう感じました」
塾生となった小田氏に対して、松下氏は思いがけない言葉をかける。
「吉田松陰先生の松下村塾からは多くの幕末の志士が世に出た。松陰先生という師匠がいたからだ。しかし、松下政経塾には師匠、塾長はいない。君は塾生でありながら塾長だと考えなければいけない」
意外な言葉に驚く小田氏に対し、松下氏はさらに続けてこう言った。
「塾生だという気持ちでいたなら、『教えてもらう』『リーダーにしてもらう』という受身の姿勢になる。次世代のリーダーになろうという人物がそんな意識ではだめだ。だから自ら塾長であるという考え方が重要なのだ」
塾生からみれば、リーダーになるための知恵を教えていただきたいという姿勢になるのは当然である。リーダーになるための教えを受ける前から「リーダーであると思え」と松下氏は説いたのだ。この松下氏の言葉には、松下流成功法則の神髄がある。